ICT市場調査コンサルティングを行うMM総研(東京都港区)は、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」の第2期における1人1台端末の更新計画について、市区町村の方針を調査した。都道府県共同調達への参加意向を聞くと、91%の市区町村が参加する意向を示した。不参加を表明した市区町村は4%にとどまっている。理由は「政令市や特別区など人口規模が大きい」「調達時期が合わない」「LTEモデルなど独自の要件がある」などが挙げられた。
GIGA第2期では、政府の負担によって都道府県に基金を設け、補助金を交付する方式を取る。前回は、市区町村単位で端末の調達が実行された。今回は都道府県ごとの共通仕様書に基づいて共同調達が進められる予定のため、調達の大型化が予想される。
共同調達する上での課題や懸念事項について「端末価格の高騰」との回答が最も多く、48%を占めた。次いで「各種計画(端末更新、ネットワーク、校務DX)の策定に時間が掛かる」(27%)、「端末のカバーやペンなど周辺機器を購入する予算が足りない」が続いている。
自由回答でその他の課題を尋ねると「3OSを適切に比較できていない」という声が多く寄せられた。「共同調達の内容が確定されておらず先行きが不透明」「県の統率力に疑問を感じている」という声もあった。
調達予定の端末単価については、政府補助金の範囲内である「5.5万円以内」とする市区町村が71%を占めた。「5.6万円以上」は全体の15%を占めており、その中でも6万円台が最も多く、最高でも8万円台までを想定しているようだ。
調達台数と時期を1114市区町村の652万台を対象に分析したところ、端末更新の68%(443万台)が2025年度に集中することが分かった。2025年度には法人市場でもWindows10の延長サポート終了に伴うPCの更新需要が見込まれていて、円滑な端末供給と更新作業が課題となりそうだ。
端末更新でOSを「切り替える」市区町村については、12%にとどまった。一方、「切り替えない」と答えた人は6割を超えた。端末更新にあたって3OSを比較検討している市区町村が多く、都道府県主導で3OSを比較したという市区町村は約7割にのぼった。
調達方針を決めている796の市区町村の内訳をみると、ChromeOSが211万台(構成比57%)、iPadOSが101万台(同28%)、Windowsが55万台(同15%)となっている。
端末価格の上昇を懸念する市区町村が、本体と周辺機器や端末管理ソフトを補助金額である5.5万円以内に抑えようとすると、クラウドと処理を分散することで比較的コストを抑えられるChromebookを選択がしやすいと考えられる。
一方で、Windows PCは個人市場での平均出荷単価が10万円を超え、AI活用への対応に伴い、さらに価格が上昇する見通しだ。
MM総研は「オプトアウト比率が少ないことからも、市区町村の『事務手続きの軽減』『仕様書に基づく端末・ソリューションの調達』などで、政府が狙った共同調達方式に一定の成果を出すことができそうだ」と述べている。
一方で「調達の大型化は価格低減の可能性があるが、納入者が大手サプライヤーに絞られ、地元の販売店が市場に参入できなくなる恐れがある。供給格差を無くすため、地域単位での入札やコンソーシアム方式の導入も必要だ。共同調達を主導する都道府県担当者の経験不足も懸念される」と指摘している。
調査は、全国の市区町村1741の教育委員会(1738委員会)を対象に、電話による聞き取り調査(一部EメールやFAXによる調査票の送付・回収を併用)をした。期間は7〜8月、有効回答数は1279件。
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