株式会社wib代表
資料作成を通じたマーケティング支援サービス「スゴシリョ」を主軸に事業展開し、その姉妹サービスであるインサイドセールス支援サービス「スゴアポ」のβ版を、2024年春から提供開始。
10年前にスタートアップの世界に足を踏み入れて以来、ビジネスマッチングサービス「PRONIアイミツ」やリモートアシスタントサービス「CASTER BIZ assistant」といったB2B企業の役員として、新規事業の立ち上げや顧客開拓、マーケティングなど、事業拡大に関わるさまざまな経験を積んできた。
「転職者が相次いで人手が足りない」「せっかく人材を確保できても、戦力になるまでに時間がかかってしまう」……インサイドセールスでは、長年深刻な人手不足が続いています。
この連載では3回にわたり、インサイドセールス領域における市場の現状やリアルな課題、成功している企業の共通点について、筆者の経験談を交えながら紹介します。
第1回では、多種多様な企業が公表しているインサイドセールスに関する調査データを基に、インサイドセールスの現状や人材確保の難しさなどの課題について、紹介しました。改めてになりますが、インサイドセールス成功の鍵は「優れた人材をそろえること」と「質の高いリストを用意すること」です。
今回の記事では、”事業立ち上げの仕事人”の筆者が、第1回で浮き彫りになった現状・課題に対する具体的かつ抜本的な解決策を、インサイドセールス成功の鍵の1つである「人材をそろえる」という観点からご紹介します。
営業活動には大きく分けて「インサイドセールス」と「フィールドセールス」の2つがありますが、これらが同一視されたり、両方のスキルが採用時に求められたりするケースが依然として多く見られます。「営業」という大枠は同じですが、インサイドセールスとフィールドセールスでは、営業スタイルはもちろん、セールス活動において必要とされる資質も異なります。
そのため、必ずしもフィールドセールスにおける優秀な人材=インサイドセールスにおける優秀な人材とは限りません。
では、インサイドセールスにおける優秀な人材とはどんな人材でしょうか。どんな資質が求められるのでしょうか。インサイドセールス経験者への調査と、企業側の目線から読み解いていきます。
インサイドセールス専門の人材紹介業を営むブライトシーンが実施した調査「インサイドセールスの特徴」では、91.7%のインサイドセールス経験者が「インサイドセールスとフィールドセールスには異なる資質が求められる」と回答しています。また、割合は減るものの、61.1%が「フィールドセールスが苦手でもインサイドセールスなら活躍できると思う」としています。
インサイドセールスに向いている人の特長としては、フィールドセールスからはあまりイメージできない、「デスクワークも好き」(42.2%)という意見がみられました。その他「失敗しても前向きに考えられる」(36.3%)、「対面よりもリモートのやり取りが好き」(35.5%)といった特徴が挙げられました。
それでは、インサイドセールスを採用する企業側目線ではどうでしょうか。
第1回でも触れているようにインサイドセールスの離職率は非常に高く、圧倒的な人手・人材不足に陥っています。
B2B企業のインサイドセールス支援を行うセールスリクエストの野口氏は、同社の公式noeteの記事で、以下のように話しています。
経験者だけでなく、未経験であるポテンシャル採用も視野に入れた採用を進める企業様も多いですが、ポテンシャル採用は、従来の経験やわかりやすいスキルに基づく採用方法よりも、将来的な成長性や適応力、意欲等を的確に見極める必要があり、言語化も非常に難しいです。
優秀な経験者を採用するのも、ポテンシャルのある未経験者を採用するのも難しい状況なのです。
採用する企業側は求職者に対して多くの資質を求めます。しかし、離職率が高く人手や人材不足が深刻な状況において、全ての条件を満たす優秀な人材を採用することは果たして可能でしょうか。全ての条件を満たし、即戦力となる経験豊富な逸材を採用することは、さらに困難であると思われます。
筆者はこれまで、即戦力人材の採用が困難な中、事業を成長させなければならない状況に何度も直面してきました。その際、まず即戦力にこだわりすぎることは止め、入社後のオンボーディング体制を活用し、育成前提で未経験者を採用してきました。
もちろん、即戦力人材に比べると立ち上がりには時間がかかりますが、未経験者を採用することで得られるポジティブな影響は非常に大きいものです。成長意欲や新しい視点を組織にもたらしてくれます。また、未経験者がさまざまな役割やポジション経験を経て成長し、組織のカルチャーを体現する人材となることで、影響範囲の広がりや組織全体のカルチャー形成にもつながります。
野口氏も同様に、未経験者を採用するメリットとして「意欲的な人が多い」「組織に多様性が生まれる」「異様に跳ねる人がいる」を挙げています。
ここで重要になってくるのが、未経験者の採用基準です。一般的に「ポテンシャル採用」という言葉が使われますが、「ポテンシャルがある」とは具体的にどういう状態を指すのでしょうか。
ここからは、ポテンシャルの高い優秀な人材の定義と教育方法について解説します。
新規事業の立ち上げや顧客開拓、マーケティング、経営など、事業拡大に関わるさまざまな経験を積んできた筆者が考える、ポテンシャルの高い優秀な人材の定義は「資質の見極めが容易で、教育可能性が高い人材」です。
以下の4象限の表「評価軸マップ」を基に解説します。これは、資質の見極め難易度と教育可能性を4象限にカテゴライズしたもので、組織が求めているインサイドセールスの基準を明確にします。
ポテンシャルの高い優秀な人材は、4象限の全ての項目で高得点を取れる人材ではありません。網羅性を意識しすぎると採用が困難になります。資質の見極めが難しく教育可能性が低い項目の採用優先度を下げ、資質の見極めが容易で教育可能性が高い項目を重視しましょう。
これにより、組織にとってポテンシャルの高いインサイドセールスとして優秀な人材を採用することが可能になります。組織に最適化したポテンシャル人材を採用した次に重要になるのが、オンボーディングでいかに育成するかということです。
せっかく、組織に合うポテンシャル人材を採用しても、教育で伸ばさなければ人材としての飛躍は期待できません。インサイドセールスのオンボーディングにおいては、組織の現状や目標の目線合わせをした上で、インサイドセールスのタスク(営業提案のスクリプト作成から商談まで)をリスト化し、該当項目の完遂をチーム一丸となってフォローすることで、確実に成長につなげていくことができます。
また、これらを実現するために、社員の働きやすさ・待遇の見直しや、個人営業からチームでの営業に変更するとともに、成績を上げやすい仕組みづくりを組織内で整えるなど、組織一丸となって体制づくりをすることがとても重要です。
第2回にあたる今回は、第1回で触れました、インサイドセールス職の現状を前提に、フィールドセールスとインサイドセールスで必要とされる資質の違いなどを整理し、インサイドセールスとしてのポテンシャルを持つ優秀な人材の定義と教育方法について解説しました。
しかし、抜本的な見直しを図るにはどうしても、採用体制の再構築が可能な組織である必要があります。
次回の第3回では、すぐに採用体制の再構築ができない場合など、早急に優秀な人材がほしいときをテーマに、社内外のリソースを活用したハイブリットのインサイドセールスなどについて解説します。ビジネスマッチングサービス「PRONIアイミツ」やリモートアシスタントサービス「CASTER BIZ assistant」といったB2B企業役員経験のある筆者ならではの活用方法やその注意点について、ITmediaの調査結果などを基に紹介します。
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