「完成マンション取り壊し騒動」 心配なのは積水ハウスではなく、国立市といえるワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/4 ページ)

» 2024年09月21日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

昔ながらの商店街で、起爆剤としてマンションはうってつけだったはず

 JR国立駅を降り立つと眼前に見えるのは、当時のものを復元した赤い三角屋根の国立駅旧駅舎と、駅前ロータリーだ。ロータリーには、赤レンガ風で多摩信用金庫の歴史・美術館を併設したビル、さらに1952年に指定された「国立文教地区」の看板が見える。文教地区のため、駅周辺部にはキャバクラ、ガールズバー、パチンコ店の類は存在しない。

解体したマンションの向かいにも同じくらいの高さのマンションが

 解体中のマンションは、多摩信用金庫ビルの辺りから西南へ延びる、富士見通り沿いにある。駅から7〜8分ほど歩いた、通りのちょうど真ん中辺りだ。通り沿いには少しひなびた商店街が続いており、通行人はかなり多い。複数の学校の通学路でもあり、日中は路線バスも頻繁に往来している。

 駅に近い通りの起点部分は、チェーン店のオンパレードだが、その先は地域に根ざした個人店、それも飲食店が多い。他にも、他の街では今やなくなってしまった金物店にレコード店といった業態、今風のニッチなこだわりの店も混在し、良い意味でカオスな商店街になっている。

 しかし、末端部の郵政研修所の近くになると、シャッターが閉まったままの店舗も多い。歴史を振り返ると、2006年に駅が高架化して商業施設の「nonowa」がオープン。スーパー・総菜・ベーカリー・洋菓子・和菓子・カフェなどの店が一斉にできて以来、徐々に富士見通りのにぎわいは失われ、コロナ禍が拍車をかけたようだ。

 客観的に見て、富士見通りには活性化の起爆剤になるものが必要だ。新築マンションが建つのは、人の流れができ、良い話であるように思われた。最終的に、地域の人が建設に納得したのは、富士見通りの衰退を食い止めたいといった意思によるものではないだろうか。

国立駅広場から見える富士山(出所:国土交通省公式Webサイト)

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