山菅: 人材育成施策の一環で「技術戦略コミッティ」という、ソニーの各グループを横断する技術の横串活動も行っています。社員の育成と組織間の交流を通じてソニーの技術力を支える取り組みです。
奈良: ソニーグループは映画・音楽・エレクトロニクスなど多様な事業を展開されていることもあり、保有している技術の幅も広そうですよね。技術領域の数や参加人数も教えていただけますか。
山菅: はい、現在は技術領域別に11コミッティがあり、事業の垣根を超えて最先端の技術領域を共有するとともに、技術力を高める場となっています。約1700人が参加しており、新人エンジニアからシニアエンジニアまで、幅広い世代の社員が活動しています。
違う会社のエンジニアと交わる場であることに加え、人材の育成においても重要な取り組みになっています。講演会や勉強会、展示会など、学びのための施策も行っています。
奈良: 単に技術を共有するだけではなく、育成施策にも活用されているのですね。
山菅: はい、「技術戦略コミッティ」を通じて技術革新と組織的な技術の横展開を行っており、育成色もあるのですが、社員の育成と組織間の交流を通じてソニーの技術力を支える取り組みなので、シナジーを創出するという観点でも重要な施策だと捉えております。
コンテンツ技術に強い会社、エレクトロニクスに強い会社など、強みとする技術がグループ会社ごとに大きく異なりますので、自分達の強みを横展開することでシナジーを創出できればと考えています。
奈良: ありがとうございます。ソニーユニバーシティは2000年、技術戦略コミッティは2012年頃から取り組まれていて、長く運営されているお取り組みですよね。
他社のケースで「施策を始めてはみたが、運用がうまくいかず形骸化してしまった」というお話も聞くのですが、長く運用する秘訣はありますか?
岩崎: そうですね。ソニーユニバーシティで言うと、卒業生が現場の部門長や役員になるケースが非常に多く、参加した当事者が次世代に継承し、そしてまた次の世代へとバトンが渡っていっているので、歴史の積み重ねによるものが大きいように感じますね。
山菅: 技術戦略コミッティは、人事も大きく関わりながら技術戦略組織と両輪で運営してきました。この活動は完全にボトムアップというわけではなく、役員を筆頭に活動状況を毎年確認し、結果を出して各組織に持ち帰るようにしています。そのため、PDCAをしっかり回していくことも重要なのかもしれませんね。
奈良: 施策の対象者に関してご質問です。「人と人とをいかにつなげていくか」という点において、想定している社員のレイヤーはありますか?
岩崎: まずは、上の層を越境させていかないと下につながっていかないと思っているので、浸透させていくという意味で管理職レイヤーなのかなとは思います。
ただ、ソニーユニバーシティもリーダー層が参画していたり、技術戦略コミッティも担当者クラスもいたりするので、現在も網羅的につなぎ合わせができているのではと思います。
奈良: そういえば、グループ内だけではなく、新たな試みとして日立製作所と相互副業のお取り組みも発表されましたよね。
岩崎: はい。具体的な部分はこれから発信していけたらと思うのですが、新たな市場の創出にむけて社内外で「越境」していきたいと思います。
奈良: どのようなシナジーが生まれるのか、発信を楽しみにお待ちしています。本日はどうもありがとうございました。
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