連結運転は、駅のプラットホームや車両を効率的に運用できるほか、需給調整もできる。利用者は乗り換えなしで目的地に行ける。良いことばかりのようだけれど、欠点もある。
1つはダイヤが乱れた場合の回復が難しいこと。例えば、東京行きの「こまち」と「はやぶさ」の一方が遅れて、所定の時刻に盛岡駅に到着しなかった場合は、連結にこだわると両方の列車が遅れてしまう。東京駅到着時刻が遅れると、大宮〜東京間を共用している上越新幹線、北陸新幹線のダイヤに影響する。
数分程度の遅れであれば、連結相手を待たせて連結し、大宮まで少し速度を上げて遅延回復する。しかし運転速度では回復できないほど遅れた場合、東京到着時刻を優先させるならば、遅れた方の列車を盛岡駅で打ち切り、連結相手を先行させる処置も必要だ。せめて大宮駅まで走って打ち切ってほしいけれども、運用上、急に運転士を用意できない。
東北新幹線の福島駅は山形新幹線につながる線路が下り線側しかないため、上り列車が下り線側に移る必要がある。その結果、下り線をふさいでしまうためダイヤが乱れると回復しにくい構造だった。現在、上り線側にも山形新幹線と接続する線路を建設している(出典:JR東日本、山形新幹線福島駅上りアプローチ線新設)「はやぶさ」と「こまち」、「やまびこ」と「つばさ」の連結運転では、「こまち」と「つばさ」の遅延が発生しやすい。原因は天候だ。「こまち」の田沢湖線、「つばさ」の奥羽本線はともに奥羽山脈を越える地点で豪雨、豪雪が起きやすい。この問題を解決するために、田沢湖線、奥羽本線ともに長距離トンネルを新設する計画がある。
悪天とは無関係の平常時も懸念はある。連結作業の分だけ停車時間が長くなる。連結も解結も自動化されているけれども、「低速で進入し、いったん停止し安全確認」という手順は省略できない。東北新幹線では所要時間が延びるリスクと、乗り換えなしで直通できる利点を比較して、直通を採っているわけだ。
鉄道では原則として“1つの区間に1つの列車しか存在できない仕組み”になっているけれども、分割、連結するときは2本の列車が存在する。そこで信号設備も特別に用意して、1つのプラットホームに2本の列車が存在できるシステムにする必要がある。これも直通運転のための投資だ。
2本の列車を1本にすると、運転台は4つになる。同じ車両数で比較すると運転台の分、分割しない編成よりも定員は減る。新幹線は先頭車の鼻が長いため、定員減少が目立つ。「はやぶさ」に使われるE5系電車の中間車は最大定員98人、先頭車(普通車)は最大定員29人で、約70人も減ってしまう。
サービス面では「乗り間違い」の懸念もある。青森へ行くつもりの乗客が秋田行きに乗ってしまったら困る。これは駅や車内の旅客案内を徹底するだけではなく、ハード面の工夫もある。「はやぶさ」「こまち」、「やまびこ」「つばさ」の車体は明確に色を変えている。「こまち」は「赤」、「つばさ」は「紺とオレンジ」で、「はやぶさ」や「やまびこ」の「ミドリ」と明確に違うようにしている。趣味的には同じ色でそろえたほうがスッキリカッコよくなるけれども、実用性重視である。
さらに「はやぶさ」と「やまびこ」は1号車から10号車まで、「こまち」と「つばさ」は11号車から17号車としている。「こまち」と「つばさ」を1号車から7号車にすると、連結したときに1号車から7号車まで2両ずつ存在し、乗り間違いの原因になるからだ。また、「はやぶさ」「こまち」「つばさ」は全車指定席になっているから、自由席特急券で乗り間違える心配はない。
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