音声データの活用が進むことで、評価基準も変えることができます。営業活動を例にすると、これまでは売り上げや案件数といった結果に重きが置かれてきました。そのため、顧客から重要な課題を聞き出したり、将来的に受注につながる可能性のある関係性を築いたりすることは、目先の受注に至らなければ評価の対象になりません。
しかし、中長期的な視点で見ると、そのような顧客との関係構築も重要な活動となるはずです。また、仕事の本質が顧客の課題解決であり、感謝されることであるとすれば、これらに貢献する活動と成果も評価に値するといえます。音声データの活用は、営業活動の結果だけではなく、プロセスも可視化します。例えば、顧客から何度「ありがとう」を言われたかを数えることで、顧客満足度や信頼関係の構築に貢献した度合いを評価に反映できます。
多くの従業員は他者に貢献することや感謝される仕事にやりがいを感じます。このような新しい観点で評価基準を刷新していくことは、従業員のモチベーション向上や、職場の定着率の向上にもつながります。評価基準の見直しは企業文化の刷新にもつながり、他社との差別化要因にもなるでしょう。
これまで他者から教わるよりも、自ら調べ学んだことのほうが圧倒的に楽しく身についた経験は誰にでもあると思います。ビジネスにおいてもいかに自ら学ぶような姿勢=セルフコーチングをするような環境を作って、能力を高めるかが重要になってきます。
音声データを活用すれば、話し方、話すスピード、沈黙の回数、相手の会話に被せて話した回数などを定量化することができます。ハイパフォーマーの話し方を分析して可視化することで、ハイパフォーマーは自分の長所を把握することができ、他の人はその内容を参考に、自分の改善点を確認しながらトレーニングができます。
話し方には人それぞれのクセがあり、クセは自分では気付きづらいものです。音声データの分析は、話し方のクセをデータによって客観的に示し、「自分は早口だったのか」「話しすぎの傾向があるのか」という気付きをもたらします。
この音声データは、セルフコーチングだけでなく、研修プログラムにも応用できます。分析によって見えてきたハイパフォーマーの特性を基に、トレーニングプログラムや商談スクリプトを改善することで、人材育成の効率化と効果的なスキル向上が実現します。
音声データをセルフコーチングに活用していくためには、まずは担当者にメリットを感じてもらうことも重要です。日常業務で音声認識を活用することにより、議事録作成や報告業務の時間が削減され、生産性が上がれば担当者は喜んで使います。音声データを活用するメリットを感じてもらい、自ら進んで使ってもらうようなシステムを導入することがセルフコーチングを推進する第一ステップとなります。
AI時代に「音声データ」が持つ価値とは? コミュニケーションを”資産化”する方法Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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