AI時代に「音声データ」が持つ価値とは? コミュニケーションを”資産化”する方法「音声×AI」が変えるビジネスの未来(1/3 ページ)

» 2024年09月20日 08時00分 公開
[會田武史ITmedia]

新連載:「音声×AI」が変えるビジネスの未来

ビジネスシーンでAI活用が広がっている。AIに学習させられるデータは、テキストや画像だけではない。実は有効活用できるにもかかわらず、多くの企業が気付いていない宝の山、それが「音声データ」だ。「音声×AI」を軸としたサービスを展開するRevComm(東京都渋谷区)の會田武史・代表取締役が、音声データが有する潜在的な価値と、AI技術で最大限に活用する方法を解説する。

 AIの活用がビジネスのあらゆる場面で広がっています。AIに学習させるデータとして、テキストや画像などがすぐに思い浮かぶかもしれませんが、実は多くの企業がまだ気付いていない宝の山があります。それが「音声データ」です。

 音声データは比較的容易に収集できるうえに、話者のパーソナリティやニュアンス、緊急度など、多くの貴重な情報が含まれており、AIを掛け合わせることで、ビジネスに大きな変革をもたらす可能性があります。

 この連載では、2017年の設立以来「音声×AI」を軸としたサービス開発や研究を進めてきたRevComm(レブコム、東京都渋谷区)の代表取締役・會田武史が、これまでの実績をもとに、音声データの潜在的な価値と、それをAI技術で最大限に活用する方法について、具体的な事例を交えながら解説します。

AI時代に音声データが持つ潜在的な価値とは? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:會田 武史(あいだ・たけし)

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株式会社RevComm代表取締役

三菱商事株式会社にて自動車のトレーディング、クロスボーダーの投資案件・新会社設立、M&A案件等に従事。

2017年7月株式会社RevComm設立。電話解析AI「MiiTel Phone」、Web会議解析AI「MiiTel Meetings」、対面会話解析AI「MiiTel RecPod」を提供。

著書に『音声×AIがもたらすビジネス革命 VOICE ANALYSIS』(幻冬舎)がある。


なぜAIを活用しなければならないのか?

 生成AIの登場により、4度目のAIブームが到来したといわれています。今回のAIブームはこれまでの一過性のものとは異なり、日常生活やビジネスに不可欠なものとして社会に定着するでしょう。

 ITブームから日常に定着し、当たり前となった代表例に「インターネット検索」と「SNS」が挙げられます。インターネット検索がデータの民主化、SNSが情報通信の民主化を促進したように、ChatGPTをはじめとした生成AIは、誰でも簡単にAIを活用できる「AI活用の民主化」を加速させています。ビジネスにおけるAI活用も一層進み、AIを活用する企業とそうでない企業の競争力の差は、ますます広がっていくでしょう。

 さらに日本にはAIを活用しなければならない特有の事情もあります。それは労働力不足の問題です。人口減少により日本企業の原動力となる生産年齢人口(15〜64歳)は、2020年から2070年にかけて7500万人から4500万人へと約4割も減少すると言われています。このような状況で、企業が成長していくためには生産性を高めることが不可欠であり、AIの活用が重要な鍵となります。

AI時代における音声データの可能性

 AIの効果的な活用には、学習データの質と量が重要です。企業が保有するデータは、主に画像・テキスト・音声の3つに分類されます。画像やテキストデータは、文書や資料、メールなどから、きれいに整形された状態でビッグデータとして蓄積されていますが、「口頭での会話データ」については手付かずの状態で、顧客と担当者が「何を」「どのように」話しているか分からないといった「会話のブラックボックス化問題」が発生しています。

「会話のブラックボックス化問題」が発生している(RevComm提供、以下同)

 例えば、商談や会議の内容を担当者が議事録などの文章にまとめる場合、話した内容を細かく記載するには労力もかかりますし、担当者の主観が入り、正確に記録することは非常に困難です。そこで、会話を録音し、AIに解析させることで、商談や会議の内容を自動で文字起こしし、要約して議事録を作成できるようになります。また、話した内容をトピックごとに分けて感情の変遷などを共有することで、工数をかけずに正確な情報を伝達できます。

 メモを取る時間や内容を振り返る時間が短縮されて生産性が向上し、商談や会議に集中できるため議論の質も高まります。情報共有される側の視点では、より精緻に内容を把握できるため、ミスコミュニケーションが減ります。

 さらに、音声データの話し方解析や感情解析を行うことで、話し方の特徴を分析・可視化したり、どのような話をした際に相手が反応を示したのか客観的かつ定量的に把握できます。そうすることで、自分で時間をかけて分析をしなくても、セルフコーチングが可能となり、音声データとAIを活用してコミュニケーションを最適化させることができます。

RevCommが開発・提供する音声解析AI「MiiTel」を活用した音声データ活用のイメージ

 音声データのAI活用については、活用事例がまだ少なく、音声データの価値に気付いている企業も少数です。AIは良質なデータの量で出力の質が決まることを念頭に置いて、音声データの収集、蓄積、分析、共有の仕組みを早急に構築することで、AI活用において一歩リードを取ることができ、企業にとって非常に大きなチャンスとなります。

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