根性論をなくす 人材育成を変革する「音声データ」活用法とは?「音声×AI」が変えるビジネスの未来(1/3 ページ)

» 2024年10月08日 11時00分 公開
[會田武史ITmedia]

連載:「音声×AI」が変えるビジネスの未来

ビジネスシーンでAI活用が広がっている。AIに学習させられるデータは、テキストや画像だけではない。実は有効活用できるにもかかわらず、多くの企業が気付いていない宝の山、それが「音声データ」だ。「音声×AI」を軸としたサービスを展開するRevComm(東京都渋谷区)の會田武史・代表取締役が、音声データが有する潜在的な価値と、AI技術で最大限に活用する方法を解説する。

 AI時代に、音声データが持つビジネス価値を探る連載「『音声×AI』が変えるビジネスの未来」。第1回では、コールセンターなどを例に、顧客の声をビッグデータとして収集しAIと掛け合わせることで、マーケティングや営業活動に利用できるケースを紹介しました。

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 音声データのAI活用は、営業力の強化や業務効率化を目的として導入するケースが多く、その効果は十分に期待できますが、実は、それだけではありません。採用の強化や従業員の定着率向上といった副次的な効果も期待でき、人口減少・人手不足が叫ばれる日本企業にとって大きなメリットがあります。今回は「音声×AI」でどのように働き方を変革し、人材育成やマネジメントに新たな価値を提供するかを解説します。

 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:會田 武史(あいだ・たけし)

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株式会社RevComm代表取締役

三菱商事株式会社にて自動車のトレーディング、クロスボーダーの投資案件・新会社設立、M&A案件等に従事。

2017年7月株式会社RevComm設立。電話解析AI「MiiTel Phone」、Web会議解析AI「MiiTel Meetings」、対面会話解析AI「MiiTel RecPod」を提供。

著書に『音声×AIがもたらすビジネス革命 VOICE ANALYSIS』(幻冬舎)がある。


「気合い・根性論」に流されないデータドリブンな人材育成

 人材育成には、「上司や先輩による指導スキルに差がある」「育成のための具体的な改善点を伝えられない」――という2つの課題があります。音声データは、この課題解決に大いに役立ちます。

 まず「指導スキルの差」について、従来の育成方法として、上司や先輩がOJTで指導するケースが多いのではないでしょうか。OJTは実践的で良い方法ですが、教える人のスキルによって成長のスピードに差が出ることがあります。

 そこで、部下に慕われる上司や、教え上手な先輩の会話をAIで解析します。例えば、部下に慕われる上司は「部下の話を遮らずに最後まで聞く」「相手と同じペースで話す」など、AIの話し方解析により指導スキルの差を生む要因が明らかになります。さらに、音声をデータ化することで、簡単に共有できるようになるため、これまでブラックボックス化されていた教え上手な上司や先輩の特性を社内のノウハウとして蓄積し、教育担当者のスキル差をなくし、育成方法を標準化できるようになります。

 「育成のための具体的な改善点を伝えられない」という点についても、音声データが解決に役立ちます。例えば営業職の場合、成果を比較することで、売れる人と売れない人の差は分かります。しかし、差が生まれる理由や改善点が分からない場合、「モノではなく自分を売る」という精神論のアドバイスに偏ってしまったり、「もうちょっとゆっくり伝える」「もっと相手の話をよく聞く」というような抽象的な指導になりがちです。また、ハイパフォーマー本人が、自分のパフォーマンスが良い理由を言語化できていなかったり、自覚していなかったりすることもあります。

音声データの活用で、教育担当者のスキル差をなくし、育成方法を標準化できるようになる

 このような場合も、音声データをAIで解析することで、「ゆっくり」とは一秒あたり何文字で話すとよいのか、「よく聞く」とは何%の時間を使って話を聞くことなのかを定量的に示すことができます。

 また、具体的な改善策が見えない状況では、目標設定も「1日100件電話する」「月に100人から名刺をもらう」という、気合いと根性による数の論理になりがちです。音声データを蓄積・分析することで「この業界は、何曜日のこの時間帯に電話をかけるとつながりやすい」といった、行動と成果の相関性も明らかになり、データに基づいた効果的なKPI設定が可能になります。

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