日本の週刊漫画誌は、1誌当たりおよそ20作品が掲載され、1話20ページ前後のマンガを原則1カ月に4〜5本、漫画家1人当たり年間で40〜50本ほど掲載します。2024年現在の今でこそ、週刊連載は適宜1カ月に1週休載を入れるなどして、作家の体調を維持するようになりましたが、70年ほどの漫画雑誌の歴史のうち、ほとんどの期間は、毎週休まず漫画家が描き続けることが当然となっていました。
先述の通り、アメコミなども早いペースの連載はありますが、1人の作家と1人の編集者が、読者が読んで満足するボリュームの作品を週に1度描いて出し続けるというのは、世界に類を見ないとんでもないハイペースでの作品の量産となり、これが日本マンガの豊かな裾野となっています。
現在も出版され続けている複数の週刊少年漫画誌のほかに、ヤングジャンプ、ヤングマガジン、ビッグコミックスピリッツといった、少し上の世代を狙った青年向けの週刊漫画誌や、多数の月刊誌、隔週刊誌などが生まれ、漫画雑誌はピーク時で200を優に超える数となりました。
一つひとつの媒体の発行ペースも早いですが、前出の「アメコミ」や「バンドデシネ」に比べると、そのレーベル数もはるかに凌駕(りょうが)します。よって、諸外国に比べるとはるかに膨大な作品を生み出し続けてきたこととなりました。
そして、漫画雑誌はさまざまな読み手の属性を持っています。
大きい括(くく)りとして、少年誌、青年誌、少女誌、女性誌、児童誌や成人向けの年齢層別、ファンタジーや歴史ものなどカテゴリーに特化するもの、BL(※5)やTL(※6)などのジャンルに特化するものなど、その中で多様な作品を育んできました。この膨大なジャンルの数も前出の「裾野」を構成する大事な要素です。
これらの膨大かつ多様な媒体は、作品の多様性を生みました。
この多数の編集部が子ども向けから大人向け、趣味嗜好性癖を広くカバーする豊穣なる多産の仕組みとなり、裾野を広める起点となっています。
一般社団法人MANGA総合研究所所長/マスケット合同会社代表
1973年東京生まれ。日本大学理工学部機械工学科卒。商社、コンサルティング会社、板前、ITベンチャー等を経て、2010年からNPO法人が運営する「トキワ荘プロジェクト」ディレクター。東京と京都で400人以上の新人漫画家にシェアハウス提供、100人以上の商業誌デビューをサポートし、事業10周年時に勇退した。同時に、京都国際マンガ・アニメフェア初年度事務局、京まふ出張編集部やWebサイト「マンナビ」など立ち上げた。その後、マンガ新聞編集長、とらのあな経営企画、SmartNewsマンガチャンネル、コミチ営業企画、数年に渡り『このマンガがすごい!』(宝島社)の選者を務める。クリエイター支援やデジタルコミックの事業での事業立ち上げ、営業、企画、イベント、編集、ライティング等を得意とする。noteにて毎週日曜日に「マンガ業界Newsまとめ」を発信。共著『電子書籍ビジネス調査報告書2023』(インプレス総合研究所)のウェブトーンパートを担当した。2024年3月に、一般社団法人MANGA総合研究所を設立。
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