なぜ、謎の「クラフト〇〇」が増えているのか 大企業が次々に参入する理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2024年10月16日 10時07分 公開
[窪田順生ITmedia]

 今、素材や製法に関して職人的なこだわりがあることを示す「クラフト◯◯」というネーミングが増殖中だ。分かりやすいのはクラフトビールやクラフトジン。少し前は専門店で提供されていたが、一般の飲食店でも置かれるようになってきた。

 最近はクラフトコーラも人気だ。火付け役は漢方由来の製法でスパイスや生薬などを調合した「伊良コーラ」で、銭湯や日帰り温泉などにも置かれているのでファンになった人も多いだろう。

 このような「クラフト飲料」が一部ファンの局地的な盛り上がりではなく、社会的な「ブーム」にまでなったというのは、「大手メーカーもガッツリ便乗」という点からも明らかだろう。

 発売からわずか2カ月で57万ケースを突破したキリンビールのクラフトビールブランド「SPRING VALLEY(スプリングバレー)」、サントリーのジャパニーズクラフトジン「ROKU〈六〉」、コーヒー飲料「CRAFT BOSS(クラフトボス)」、さらにアサヒ飲料のクラフトコーラ「三ツ矢クラフトコーラ」など、“クラフト感”を押し出した商品が相次いでいる。

クラフトビールブランド「SPRING VALLEY(スプリングバレー)」(出典:キリンビールのプレスリリース)
2024年2月に数量限定発売された「ROKU〈六〉SAKURA BLOOM EDITION」(出典:サントリーのプレスリリース)

 大手メーカーがこれを大きなトレンドとして捉え、「職人のこだわり」を消費者に訴求するバズワードとして重宝していることがうかがえよう。

 マーケティングの世界では、こういう使い勝手のいい言葉はすぐに広まる。例えば、スイーツ業界だ。「もともとパティシエとか菓子職人は素材や製法にこだわっているんだから、わざわざクラフトを付けなくてもよくない?」というツッコミはさておき、クラフトチョコレート、クラフトキャラメル、クラフトバターケーキなど、唯一無二の“クラフト感”を前面に押し出すスイーツ店が増えているのだ。

 とどまるところを知らない「クラフトブーム」の中で今、熱い視線を集めているのが「クラフトドレッシング」だ。全国各地の「道の駅」などで売っている、ご当地こだわりドレッシングのことで、2024年4月放送の『マツコの知らない世界』(TBS系)で取り上げられたことも追い風となって、市場が盛り上がっている。

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