まず、肉好きの人たちの間では「クラフトミート」という言葉が広まっている。よく言われるように肉は魚と違って、新鮮だからいいというものではなく、手間暇かけて「熟成」させたものがうまい。その職人の技を用いた熟成肉のことを「クラフトミート」と呼ぶのだ。
全国にそのような熟成肉を扱う精肉店や飲食店が増えているが、中でも有名なのが東京・赤羽にある「CRAFT MEAT&LAB」だ。肉を乾かすことが趣味というオーナーが日々、うまい熟成肉を探求する文字通り「研究所」だ。ECサイトには『1頭買いした牛・豚に「菌による成熟・水分・温度・酸化コントロール」を注いだ“クラフトミート”を生産している』とある。
「クラフトミート」があるのなら当然、「クラフトフィッシュ」もある。陸上養殖の産業化を目指している「さかなファーム」(東京都新宿区)は2020年9月、養殖魚の魅力を伝えるマーケットプレイス「CRAFT FISH」をオープンした。これをブランド名にして陸上・海上問わず、さまざまな養殖水産品を販売しているのだ。
よく言われるように、日本の養殖技術は非常に高い。近畿大学がクロマグロの完全養殖に成功して世界で注目を集めたように、いずれ来る世界的なタンパク質不足の解決策の一つになるとも期待されている。そんな職人的技術を「クラフト」と銘打つのは、当然と言えば当然かもしれない。
また、あまり「職人のこだわり」というイメージが直結しない「牛乳」の世界にも「クラフトミルク」という言葉が登場している。それが2024年6月、東京・吉祥寺に誕生した乳業メーカー「武蔵野デーリー」である。
100年続く牛乳屋が立ち上げたメーカーで、「フリーバーン」(牛が自由に歩き回ることができる牛舎)など、牛をのびのび放し飼いにするなど、こだわりの飼育をしている牧場の生乳だけを用いた牛乳、つまりは「クラフトミルク」を製造販売するという。
このようにありとあらゆる食品、そして原料にまで「クラフト」をうたい始めている現状に対して「どうせ一過性のブームでしょ」と冷ややかに見る人もいらっしゃるかもしれない。
ただ、筆者は意外とこの流れは、分野によっては定着していつの間にやら「定番」になり変わっている可能性も大いにあると思っている。
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