スタバの国内初「子連れ店」、真の狙いはファミリー客の獲得にあらず? 店舗増がゆえの悩みとは(5/5 ページ)

» 2024年10月28日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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自社競合を避けるためにも新業態が必要なスタバ

 6月末時点で、スタバの国内店舗数は1948店舗。 もはや「スタバがないところはない」というほど出店しています。これだけの出店数になると当然、同じスタバ同士で売り上げを食い合う現象も発生します。今後も出店数を増やせば自社内競合はさらに激しくなるでしょう。この自社競合を防ぎつつ、出店しても売り上げを上げ続ける店づくりをスタバは模索し始めているのです。

イオンレイクタウンにある通常のスタバ店舗

 スターバックス コーヒー ジャパンの業績をコロナ前と比較すると、2022年度は2019年度に比べて売上高は143.9%。純利益率も5%を超えており、飲食業の中でも高収益体質を維持している会社といえます。

 一方で、売上原価と販管費は、売上高や売上総利益以上に伸び率が上昇しているのが分かります。仕入原価の高騰や人件費、水道光熱費などの上昇により、利益が伸び悩んでいるというのが実状です。原価高騰や経費上昇を吸収するためには出店して売り上げを稼ぐしかありません。そのためには、より効率の良い出店、さらに既存店を定期的にリニューアルして、売り上げを増やし続ける店づくりを実現する必要があるのです。

粗利の伸びが鈍化している国内スタバ

 日本国内とは異なりますが、米国のスタバ本社では国内の外食離れや中東での不買運動の影響などで業績の低迷が続いています。8月にはラクスマン・ナラシムハン最高経営責任者(CEO)が退任し、同社の業績を大幅に向上させたブライアン・ニコル氏が着任しています。

 世界に4万店弱を展開するスタバ。茶系飲料に特化した「T&C」業態も少しずつ増やし、主要都市には「スターバックス リザーブ ロースタリー」という高価格業態も出店しています。しかしそれらはまだメイン業態ではなく、ベースとなるのはあくまでも標準的なスタバ業態です。

 基本的に同じ店づくりでチェーン展開してきた同社が、今後は立地や客層によって少しずつ新業態を開発していく可能性を感じたのが、今回の子連れスタバでした。小売り・サービス市場では今後、店の飽和化という現象がより鮮明になってきます。その意味でスタバの業態開発には、今後も注目したいと思います。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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