東芝はかつて「ガバナンス優等生」と言われていました。なぜなら大手製造業のなかで2003年にいち早く、経営陣の企業運営のチェック強化を目的とした「委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)」となったためです。
ただ、監査委員会のトップは元最高財務責任者が務めており、指摘する側も生え抜き。実態としては身内で固められたガバナンス体制であり、日本企業の典型例でした。これは経営者のインタビュー記事でよく見られる「会議室に突然呼ばれ、『次の社長を務めてもらう』と言われた」という、委員会や取締役会ではなく、密室で次期社長が決められていることを意味しています。
当時、東芝の指名委員会の構成は、会長と社外取締役2名の計3名。そのため、「過半数は社外の人であり、客観的な判断ができる」という状態に見えていました。ただ、2017年に東芝が公表した内部管理体制の改善報告によると、事実上の人事権は会長にあり、指名委員会は機能していなかったと記載されています。
社長が人事の原案を作成・説明することに加え、後継者計画が明確に規定されていないことや、社外取締役に情報提供もされていなかったことから、人事に関して社外の人が意見できない状態でした。
本来であれば社内で後継者計画があり、それをきちんと株主に説明したうえで、最終的に株主の投票で決定されるべきですが、それがなされていませんでした。社長が会長になり、会長が名誉顧問になる。日本企業にはそうした習慣が残っていますが、「ガバナンス優等生」と呼ばれていた東芝ですら、そうした状態から脱却できていませんでした。
こうしたずさんなガバナンスが、後々の経営に大きな影響を与えたのです。
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