長い業歴のなかで、変化を恐れず「進取の気性」を持つことで多くの災害や需要の変化などを乗り越えてきた老舗企業だが、足元では倒産が目立つ。
2024年9月時点で業歴100年以上を有する老舗企業は4万5284社に上る。200年以上の企業は1813社、300年以上の企業は889社、500年以上の企業は47社と続いている。
全国における老舗企業の割合を指す「老舗出現率」は2.75%で、都道府県別で見ると、京都府が5.35%で最も高かった。商業の中心地ではなかったものの、倹約・勤勉などの精神が根付く京都府における老舗の存在感は今でも強い。京都府内で最も多かった業種は呉服文化が色濃く残る織物卸売業で、旅館、造園、製茶業など和物系の業種が上位となった。
東京都は社数としては5301社で最も多かったものの、老舗出現率においては2.24%で38位だった。
老舗企業数を業種別でみたところ、貸事務所業が1216社でトップだった。このうち半数超の企業は従業や過去の主業として別の事業があり、本来の主業があるなかでもテナント収入など不動産収入が売上高のメインとなっていた。その他、建設業や小売業が上位にランクインした。
売上高別では、42.7%が「1億円未満」という結果に。売上高が判明している老舗企業の約4万社のうち、多くが小規模事業者であることが明らかとなった。売上高10億円以上の割合は、合計で20.5%にとどまった。
一方で、老舗企業のうち「1000億円以上」の割合は1.0%と小さいものの、全国にある売上高1000億円以上の企業のうち老舗企業が占める割合は20.8%にのぼり、売上規模の大きさで存在感を示している。
収益性・安定性・効率性の観点から、2023年度決算における全業種(約30万社)と老舗企業(約1万社)それぞれで、財務比率指標の平均を比較した。
・収益性:売上高における営業利益率と経常利益率をみると、いずれも全業種平均より老舗企業の方が高く、特に経常利益率で大きく差が開いている。老舗企業は長年有する土地・建物などの不動産や株式などの金融資産を多く持ち、本業以外の稼ぎ(営業外収益)が多いことが背景にあるとみられる。実際に、営業外収益率は老舗企業の方が高い数値を示している。
・安定性:総資産における純資産の割合を示す自己資本比率は、老舗企業では平均38.76%となり、全業種(同28.33%)より10ポイント以上高かった。そうした中、短期的な支払い能力を指す流動比率は老舗企業の方が低いことから、資産の流動性は良好ではないことが分かる。一方で、長期的な支払い能力を指す固定比率においては、老舗企業の方が優位な結果となった。
・効率性:資産運用効率を示す総資本回転率は、老舗企業では1.21回で全業種より低かった。また、固定資産回転期間や棚卸資産回転期間など、資産の効率性を示す指標では、総じて老舗企業の方が全業種より劣る傾向が強かった。
財務指標分析では老舗企業特有の結果がみられ、長年にわたって蓄積された資産による財務の収益性・安定性が老舗企業の強みとして確認された。
しかし、2024年9月時点における老舗企業の倒産は110件に上り、すでに過去10年間でも最も多かった2019年に並び高水準で推移しているという。物価高倒産(22件)や後継者不在による倒産(16件)、金融機関から返済条件の変更(リスケジュール)を受けながらも経営改善が図れなかった返済猶予後倒産(16件)など、近年高まっている倒産要因も多く含まれている。さらに円安、コンプライアンス違反、公租公課滞納などを要因とする倒産も複数確認された。
調査結果を踏まえ、帝国データバンクは「金融機関からは『老舗だから大丈夫だろうというイメージに捉われることなく、これまで以上に本業の事業性評価を細かくチェックする必要がある』といった声も聞かれており、今後は老舗企業に対して厳しい見方が強まるとみられる。老舗企業には一定のブランド力が見られるものの、固定観念に捉われない攻めの経営が一層求められる」とコメントしている。
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