河合: ある企業さんで面白かったのが、50代の女性社員に、ちょっとドキドキしながら上司が「転勤とかどう」って聞いたら、「はい、いきます」って即答したと言うんですね。子育ては終わっているし、旦那とも別に一緒にいなくてもいいからって。それで、その人が女性の転勤第1号になった。そうしたら次々と「私も行きます」「2年とか3年で帰ってくるなんて最高じゃないですか」と手を挙げる女性社員が出てきたそうなんです。
これって発想の転換ですよね。ライフステージもいろいろ変わってきているし、寿命も伸びてみんな元気だし、特に今の50代の女性たちは出産や育児で、会社を辞めるのを余儀なくされた世代です。「第2の人生始めます」と、学校に行って学んだり、資格を取ったりする人も多いので、親の介護問題などがなければ、転勤を希望する人は多いと思います。
しかも、地方には現地採用の若い社員が結構多いので、ベテランの女の人が行くとうまくまとめてくれてすごくいいと喜ぶトップもいました。
北山: そうですね。我々はそのキャリアモデル・ロールモデルになる女性をあまり作り出せていないかもしれません。ただ、平成20(2008)年以降の入行から、ぐっと女性の比率が上がって増えているので、この辺りの人たちが、今はどんどんマネジメントに入ってきています。
これもやっぱり選択の世界で。これまでは育児をやらないといけないので、30代半ばぐらいだとキャリアをある意味あきらめざるを得なかった。でも、これからは「いったんスローキャリアに入るけれども、またチャレンジしたい」というスイッチを持てると思うんですね。
河合: スローキキャリアって考え、すごくいいですね。女性の活躍に取り組んでいた企業が行き着くのが、どうやって「ワークと切り離す」ではなく、どうやって「ワークを抱えたまま出産や育児に専念できるか」だという話は、いろいろな現場から聞いています。
せっかく築いてきたキャリアから全て離れるのは不安です。スローキャリアが選択できれば、手離れなくて済むし、仕事に戻る時も比較的スムーズに戻れますよね。
北山: やはりフルタイムフルパワーを前提に、組織や定員も設計されてきた歴史があります。それに合わせていろんな制度面、運用面、いろんな充実を図ってきているんですけど、ここは制度を変えるだけでは駄目で、やっぱりマネジメント、人事運用、経営も含めて変えていかないといけません。
そうしないと若い方々は、もう選んでくれません。労働人口もこれからも減ってくる中、選び選ばれる関係になっている。
でも「選ばれる」ところに迎合してもいけない。お互いに選ばれる関係性を目指すけど、それがドライな関係じゃなくてエンゲージメントの中でしっかりと結びついているような関係、世界を作っていかないといけません。我々が人材ポリシーの中で掲げている内容もこういった考えに基づいています。そして、何よりもここの部分をしっかりと実現していくための制度改定をつくりあげる。今回はぐっと踏み込んだものになります。
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