ヤバイ、会議室空いていないじゃん──。
出社回帰が進む昨今、多くの企業やビジネスパーソンを悩ませているのが「会議室空いていない問題」だ。この問題は、新型コロナウイルスが流行する前から長年問題視されているが、一向に解決の気配がない。
オフィス家具メーカーのイトーキ(東京都千代田区)は東京大学と組み、この問題を経済学の発想で解決する取り組みを進めている。
これまでも多くの企業では会議に制限時間を設けたり、予約システムを導入したりさまざまな解決策を講じてきた。そもそもの会議室数を増やした、という企業も多いだろう。
しかし、なかなか根本的な解決にはつながっていないのが現状だ。イトーキはその背景に4つの原因があると指摘する。
(1)参加者が少ないにもかかわらず大きめの会議室を使用するオーバースペック問題
(2)従業員が各自で会議室予約をすることでムダな空き時間が発生する隙間時間問題
(3)会議室を特定の個人や組織が独占する独り占め問題
(4)特定の会議室や時間帯に予約が集中する利用の集中問題
こういった非効率な会議室の利用実態が、多くのビジネスパーソンを悩ませてきた。
イトーキは、こうした問題を解決するために、新サービスを発表した。東京大学大学院経済学研究科を中心として設立されている東京大学エコノミックコンサルティング(東京都文京区、略称:UTEcon)と協業して開発した、会議室予約システム「Reserve Any(リザーブエニー)」だ。「会議室空いていない問題」に対し、経済学を応用して解決に取り組むのがコンセプトだ。
Reserve Anyは経済学の「マーケットデザイン」の手法を応用したアルゴリズムを搭載。(1)ポイント予約制、(2)おまかせ予約・こだわり予約──という2つの機能で、会議室予約の仕組みと、利用者の意識を見直していく。
ホテルや航空券予約などで導入されているダイナミックプライシング(変動価格制)を応用。部署、従業員個人それぞれにポイント(以下、「価格」とする)を付与し、利用者が価格を意識しながら会議室予約をする仕組みを作る。
価格は予約が集中する時間帯や会議室の予約数、設備などさまざまな要因から日々自動で調整される。これまでは参加人数が少ないのに大きい会議室を利用する、実際の会議よりも長い時間予約するといった課題があった。ポイント制の導入により、利用者は希望条件を満たす中でより価格の安い会議室を選ぶようになり、行動変容が起こると見込んでいる。
予約方法は「おまかせ予約」「こだわり予約」の2種類を用意する。
こだわり予約では、希望条件に合う会議室を選んで予約する。一方おまかせ予約は、希望条件を入力するだけで予約が完了する。予約状況に合わせてシステムが最適な会議室を割り当て、前日に会議室を確定する仕組みだ。
同社はこれら2つの機能で先述した4つの問題を解決し、限りある会議室を最大限利用できるようになり、オフィスの生産性向上が見込めると説明する。
イトーキで実施したReserve Any導入効果シミュレーションでは、午前9〜午後6時における会議室の平均稼働率が36.2ポイント、1週間当たりの会議時間数が1340時間増加。同システム導入により、希望通り予約が出来ない割合は14.8ポイント減少するなどの効果が見られた。
Reserve Anyは2025年2月に提供を開始する。
コロナ禍を経て、オフィスを縮小した企業も少なくない。加えて、Web会議需要も増加した。出社回帰の流れが強まる中、会議室のリソースをいかに確保していくかは、多くの企業にとって早急に解決すべき課題だ。この課題をいかに解決できるかが、今後のオフィス関連システムのトレンドの一つになるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング