現在の主力である宅食事業は、売上高が201億5000万円(前年同期比増減なし)、セグメント利益が23億4000万円(同16.4%増)だった。調理済み商品の配達数が、2940万6000食(同4.9%減)と、コロナ禍が落ち着いて需要減になったが、単価増で増益となった。新規事業として、日本人の5人に1人が悩むとされる糖尿向けの宅食を、ワタミファームと連携してスタートしており、成長が見込まれる。
海外事業は、売上高が52億3700万円(同47.7%増)、セグメント利益は7800万円(同665.7%増)。為替の影響と、シンガポールのLEADER FOODグループを買収したことで、増収増益となった。
農業事業は、売上高2億6500万円(同5.2%増)、セグメント損失が8400万円(前年同期は9200万円の損失)。万年赤字の事業だったが、黒字転換が見えてきた。今後は「天然のインスリン」と呼ばれるイヌリンを含み、糖尿病の人に好まれる菊芋の生産や、サブウェイに供給するグラスフェッドアイスや有機野菜に生産を集中する。投資家から見れば赤字の農業を切り捨ててほしいが、サブウェイや糖尿患者向け宅食と一体化して、黒字になるなら話は別だ。
せっかく育ててきたワタミファームを守るためにも、ワタミにとってサブウェイは絶対に欲しいブランドだったといえるだろう。今後の成長に向けたヒントは、サブウェイが11月に発売した商品にあるかもしれない(ワタミはかかわっていないけれど)。
ハインツ日本とコラボした商品として2種類のサンドイッチを発売したもので、サブウェイでは異例といえるカスタマイズができない商品。これまでの歴史を振り返ると、極めて日本向きの企画といえるだろう。サブウェイの顧客には「サブマリン・マイ・ウェイ」で自分でパンも野菜も選びたい人もいれば、カスタマイズがない固定メニューの方が良い人もいる。ワタミでは、両方のニーズに応えるシステムを考えていくといい、期待が集まる。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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