生クリーム9割の「スイーツ缶」、なぜ人気? がむしゃらに売らず30万缶突破の秘密商品名「なまくり」(3/5 ページ)

» 2024年11月28日 06時00分 公開
[小林香織ITmedia]

実は「生クリーム」の味を知らない人は多い

 今でこそ人気を得ている「なまくり」だが、9割が生クリームのスイーツと聞くと「食べきれない」と思う人も多いかもしれない。なぜ井上氏はこのような商品を開発したのか。

 「僕は幼いころから生クリームが大好きだったのですが、数年前に北海道産の高品質な生クリームを食べたとき、『生クリームってこんなにおいしいのか』と感動したんです。同時に、多くの人は“本当の生クリームのおいしさ”を知らないのではないかと思い、気軽に高品質な生クリームを食べられるスイーツをつくろうと思いつきました」

カフェなどで使われているホイップクリームが、“本来のクリーム”なのか意識していない人は多そうだ(筆者撮影)

 筆者も含め、多くの人はホイップされたクリームを無意識に「生クリーム」と呼び、それが動物性なのか、植物性なのか、あまり意識しないかもしれない。だが、実際は明確な定義があり、「乳脂肪のみを原料とした乳脂肪分が18%以上のもの」だけがクリームとされる。

 乳脂肪に乳化剤や安定剤などの添加物を加えたもの、乳脂肪と植物性脂肪を混ぜ合わせたもの、植物性脂肪のみを原料に使ったものはクリームではなく、「乳等を主要原料とする食品」に分類されている。

スーパーマーケットでは、クリームは「純生クリーム」、そうでないものは「ホイップ」と書かれていた(筆者撮影)
2つの商品の原材料名を見ると、その違いが一目瞭然だ(筆者撮影)

 井上氏いわく、一般的なカフェやクレープ屋などではクリームではなく、植物性脂肪を使ったホイップクリームを使うケースが多いとのこと。クリームに比べて風味が劣るが、これが生クリームの味だとカン違いして、生クリームを敬遠している人もいるようだ。

 「多くの人が高級な生クリームの味を知らないのは、それを気軽に食べられる場がないからだと思います。植物性脂肪を使ったホイップクリームは原価が安いし、取り扱いやすいので多くのカフェなどで使われているんです。一方、クリームは非常に風味が良いのですが、原価が高く、泡立てた後に固まりやすくて扱いづらい特徴があります」

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