一部の層にしか刺さらなそうなニッチな商品なのに、なぜこれほどの反響があるのか。この問いに対して、井上氏は「届け方を工夫しているからではないか」と答えた。
「SHIBUYA109やアドアーズサンシャイン(池袋)など多くの人流がある場所で販売していますが、それでも通りすがりの人が偶然見つけて買うのではなく、すでに『なまくり』を知っている人しか購入しません。認知したうえで購入してもらうことで満足度が上がり、ファンが増えると考えていて、あえてそのような届け方をしています」
9割が生クリームという意外性のある商品なので、何も知らずに購入してしまうと食べきれないことがあり、結果として満足度が下がってしまうという。「生クリームだけで満たされたい」という「なまくり」に興味津々な層だけに届けるために、SNSを駆使して情報を届け、狙って買いに来てもらう流れを意図的につくっているそうだ。
そうした狙いがあるため、がむしゃらに販路を広げていない。届けたい層に届けるための販路開拓は一番の難しさだという。
「商品を卸してほしいという依頼は毎日のように届きますが、ほぼ全てお断りしています。とにかくたくさん売れればいいのではなく、狙った層に届けて商品の満足度を高めることを優先しています。全自動ではなく手作業で製造しているので、大量生産が難しい事情もあります」
現在、池袋にある製造所では1日に400〜600缶を製造。できあがった商品を急速冷凍して、自販機を設置している9カ所に発送している。週末を中心に完売になることが多く、自社で運営しているオンライン販売も発送までに7〜10日を要している。今後、東京の東部や九州などにも自販機を置きたいというが、そのためには製造方法の見直しが求められそうだ。
さらに、自社で生クリームを使ったクレープやパンケーキなどの新商品を発売したり、期間限定のポップアップストアを展開したり、生クリームの味わいをいろいろな切り口で届けていきたい展望があるという。
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