リテール大革命

EC隆盛のいまも、実店舗が「死んでいない」理由Retail Dive(3/3 ページ)

» 2024年11月30日 08時00分 公開
[Cara SalpiniITmedia]
Retail Dive
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「人々は単純に店舗に行くのが好き」

 ホリデーシーズンが他の時期と異なるのは何か? その本質は、ギフトを贈るという行為にある。秋の重要な時期にショッピングストリートやモールを訪れる顧客たちの目的は、自分自身のためではなく(少なくとも主にそうではなく)、他者のためのギフト探しである。これにより「発見のためのショッピング」が重要となり、その点で店舗は大きな強みを持つ。

 「このシーズンで成功するのは、ユニークで差別化された商品と、消費者に『得をした』『特別なディールを手に入れた』と思わせる体験を提供することです」とブラウン氏は語る。

 特に低価格戦略をとる業者がこの点で成功していると指摘した。「店舗で発見できるものの追求やユニークさ、サプライズ感が魅力です。なぜなら、もし自分が正確に何を探しているかを知っているのであれば、それはオンラインで簡単に見つけられるからです」

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 多くの購入はオンラインで行われるかもしれないが、どんなギフトを贈るかを探し出す段階では、全ての世代の買い物客が実店舗に大きく依存している。

 PwCの調査によれば、ベビーブーマー世代を除く全ての世代が、ギフトを見つける主な方法として実店舗を訪れることを挙げた。ベビーブーマーにとっては、友人や家族との会話が最も重要で、実店舗はそれに次いで2番目であった。これらの方法(いずれも対面での体験)は、3番目に多かったオンラインマーケットプレイスを大きく上回る結果となった。

 「時には、単に店舗の混雑を見て『おや、ちょっと見に行かなきゃ』と思うこともありますよね」とブラウン氏は語る。「レジの行列が長いのは避けたいものですが、それが逆に『何かが起きている』と感じさせるのです。このような感覚は、オンラインでは体験できません」

 さらに、心理的な理由もある。ホリデーシーズンのショッピングは、楽しさを伴うことが多い。クリスマスのような冬のイベントや、それに付随する少し贅沢な支出は、最も暗い時期に自分を元気づける手段になり得る。店舗はウィンドウを装飾し、季節感あふれる音楽を流し、松やペパーミントの香りを漂わせる。これらは、パンプキンスパイスの香りが郷愁を呼び起こし、楽しい記憶を思い出させるのと同じように、適切な感覚的刺激がホリデーシーズンの買い物客に店舗をより好意的に感じさせる効果がある。

人々はこの時期、単純に店舗に行くのが好きなのです。それが季節感を高めてくれるのです」(ケリー・ペダーセン/PwC米国小売部門リーダー)

 他者への支出は自分自身への支出よりも人を幸せにする、とハピネスリサーチインスティテュートのCEO、マイク・ワイキング氏は昨年Retail Diveに語った。

 「この時期、人々は単純に店舗に行くのが好きです。それが気分を盛り上げてくれるのです。例えば、ホットチョコレートやフードスタンドの何かを楽しむ。そういう特別な何かがあるんです」とペダーセン氏は述べた。

 このようなニーズに応えるため、一部の小売業者は工夫を凝らしている。例えば、Macy's(メイシーズ)は今年、ヘラルドスクエアの旗艦店でホリデーマーケットを開催し、通常のホリデーウィンドウディスプレイや「サンタランド」体験と並行して展開している。また、Target(ターゲット)は「ワンダーランド」イベントを開催し、ショッピングが可能なブランド体験を提供している。

 ホリデーシーズンに単なる買い物以上の体験を提供すること――例えば外食など――は、活気あるショッピングセンターを維持する上で重要だ。ブラウン氏やペダーセン氏によれば、通常のサンタとの交流やセールに加え、限定ブランドの発売やロイヤル顧客向けの夜間イベントなど、より創造的な方法で人々を引きつけることが考えられるという。

 「これらは実際には『消費者交流センター』と呼ぶべきもので、消費者活動の多様な組み合わせが必要です」とブラウン氏は述べた。これは、街中のショッピングエリアがさまざまなニーズに応える形と似ている。「ショッピングだけでなく、エンターテインメント、飲食、地域の社交場が一体となった場所であるべきです」

 ブラウン氏によると、こうしたトレンドはすでに米国各地のモールで見られるという。さらに、若い世代の関心に基づけば、店舗でのショッピングは今後も成長を続ける可能性がある。PwCの調査では、全世代の中でZ世代が最も店舗で新しいギフトを探す傾向が強く、その割合は60%に上った。この世代はセルフチェックアウト技術やブランドアプリなど、デジタル要素に期待を抱いているものの、店舗に行くことに大きな関心を示している。また、彼らの購買力は今後さらに増加する見込みだ。

 「Z世代やアルファ世代は店舗訪問が非常に多い世代です」とペダーセン氏は述べた。「これらの世代に基づいた店舗でのショッピングの増加傾向は、今後数年間続くと思います。Z世代やアルファ世代がミレニアル世代よりも店舗を好むことは明らかだからです。このトレンドはさらに広がるでしょう」

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