新型コロナウイルスの感染が拡大した頃には、店舗の「死」という概念が議論の的となっていた。業界全体で来店客数が急減し、多くの小売業者が破産を申請、大規模な店舗閉鎖を余儀なくされた。その結果、EC(電子商取引)は顧客の生活においてさらに重要な役割を担うようになり、小売業者は新たなニーズに対応するためにオンライン機能への投資を大幅に増やした。
しかし、4年が経過した現在でも、店舗は「死んでいない」。PwCコンサルティングの米国小売部門リーダー、ケリー・ペダーセン氏によれば、来店客数は2019年の水準にほぼ戻っているという。また、以前より空き店舗は少なくなっており、若い世代は購入しない場合でも店舗でのショッピング体験を好む傾向があるという。
「来店客の性質や目的が異なっている」とペダーセン氏は述べており、来店客数の増加にもかかわらず、購入転換率は低下していると指摘している。
「これは、単に購入するためではなく、別の目的で店舗を訪れる人々が増えていることを示しているのです。例えば、返品のために店舗に足を運んだり、ただ見て回るために訪れる人が増えているのです」(ペダーセン氏)
経営コンサルティング会社Kearney(カーニー)のパートナーで米国地域の小売リーダーであるマイケル・ブラウン氏によれば、ショッピングモールや商店街での店舗入れ替えの水準も、新しい世代が自身の好みを示している証拠となり得るという。同氏はこれを良い兆候だと捉えており、新しい購買層のニーズが表面化していることを意味すると述べている。
また、この現象には、ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)ブランドのような若い企業が短期間のリース契約やポップアップ形式の店舗を求めていることも一因であるとペダーセン氏は付け加えた。
つまり、オンライン購入が増加している世界においても、実店舗小売業は依然として健全である。実際、Experian(エクスペリアン)の調査によれば、2022年から2023年にかけてのホリデーシーズンで、店舗での買い物は比較的安定しており、10〜12月の間に行われた販売の約3分の2が店舗で行われていた。また、調査対象者の約半数が今年も店舗を訪れる予定であると回答している。
特にホリデーシーズンには、AIによる推奨サービスやパーソナライズされたWebサイトでは提供できない「店舗での買い物ならではの何か」が存在する。
「『ショッピング』という言葉が示すものは、やはり物理的な世界で行われる活動です。実際に行って、見て、触れて、感じ、交流しながら最終的に何を買うかを決めるプロセスがそこにあるからです」とブラウン氏は述べた。「購入は後で店舗で行うか、オンラインで行うかもしれません。しかし、『ショッピング』と実際の『購入』には明確な違いがあると思います。そして、多くの人々が店舗を訪れ、その体験を楽しむためにショッピングを行っているというのは、依然として顕著です」
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