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若手営業が「AIのおすすめ提案」で受注 リコージャパンの営業が目指す“バディとしてのAI活用”【連載】生成AIが支えるシン営業組織

» 2024年12月05日 07時00分 公開
[小林可奈ITmedia]

連載:生成AIが支えるシン営業組織

 ビジネスにおける変化の速さと競争の激しさは年々増している。一方、人手不足に悩む企業も多い。そんな逆境の中で「売れる営業組織」を作るためには、テクノロジー活用が不可欠だ。特に近年話題となっている生成AIを活用できないだろうかと考える企業は少なくないだろう。

 本連載では、いち早く営業フローに生成AIを組み込んだ企業に取材。どのように役立ち、どのような成果が得られるのか、最先端の取り組みを紹介する。


 今回紹介するのはリコージャパン。リコーグループにおいて国内の販売・サポートを担う企業だ。同社では2024年8月中旬から、営業現場で使用する社内SFA/CRMシステムにAIレコメンド機能を搭載している。

 AIを活用した新機能で、どのような成果があったのか。また今後、営業組織においてどのようにAI活用を進めていくのか。

営業が思い付かなかった「AIによる提案」から成約も

 営業活動において、顧客の困りごとや業務課題をいかに発見できるかが、その後の提案の質を分ける。同社では、この過程に過去の営業活動データを活用し、提案の精度を向上できないかと考え、取り組みを始めた。

 8月に導入したAIレコメンド機能は、これまでの営業活動でCRMに蓄積された顧客情報や、SFAで管理する幅広い業種や顧客層との取引履歴を活用し、ターゲット顧客へのおすすめ商品・サービスをAIが営業担当に提案するものだ。

photo AIが商品やサービスをレコメンドする(画像はリコージャパン提供、以下同)

 主に顧客訪問前の準備段階や、初回訪問時に把握したニーズを基に提案内容を検討する際に活用している。また「AIがなぜその商品を提示したのか」を営業が納得して提案につなげることが重要だと考え、レコメンドの理由を表示する機能も実装している。

photo レコメンドの理由や関連資料のリンクを同時に提示する

 現在は営業がプロセスにAIを自然に活用できるよう周知と定着化を進めている段階だ。実際に若手の営業担当が、当初は提案予定ではなかった商品をAIからレコメンドされ、成約にまでつながった事例も生まれているという。

 精度向上のため、日々改善が重ねられている。AIレコメンド機能は、営業担当の日報などの活動記録を重要な情報源としている。そのため営業担当が適切に、顧客の課題やニーズをシステムに入力しないと、的確なレコメンドは生まれない。活動記録の入力項目をより詳細にするなど、インプットする情報の質の向上と、AIによるアウトプット精度向上を同時に進める。

目指すは「停滞案件を動かす策」の提案

 同社では「AIはあくまで営業業務をサポートしてくれる『バディ』のような存在」と捉えている。SFA/CRMシステムに搭載したAIレコメンド機能の他にも、リコー製のRAGサービス「RICOH デジタルバディ」で、提案書などの社内文書検索にAIを活用中だ。

 リコージャパンの担当者は、営業のAI活用の展望について次のように語った。

 「営業現場からはさらなるAIの精度向上を求められています。AIを活用することで営業活動のヒントになるよう、受注確度の高い訪問先提案、顧客とのやりとりから想定される課題の示唆、停滞している案件に対する次の活動内容の提案などの機能実装を検討しています。さらに営業プロセスの中へAI活用を定着するよう、社内での活用推進とAI機能の改善を図っていきます」

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