そこで同社は、雑誌に掲載されるお菓子などの絵を手掛けてきたイラストレーターの内田有美さんに作画を打診。「実物をもとに描く」という内田さんの創作スタイルに合わせて、料理研究家の満留(みつどめ)邦子さんに「おせち作り」を依頼した。「内田さん自身の『おいしそう』という実感や、感じた匂いなども踏まえて表現することで、写真の印象よりも柔らかく、温かみのあるイラストに仕上がりました」と関根さんは話す。
おせち料理の中身は、地域によって異なるものもあるが、取り上げる具材はどのように決めたのか。関根さんによると、どの地域の人もだいたい知っている具材など、「おせちの基本」のような品をピックアップしたという。「ですので『うちの地域と違う』ということも、もちろんあると思います」
当初は『こどものとも 年中向き』の1冊として、2023年12月に発売。するとたちまち話題となり、「通常は刊行から3年ほどかけて売れていく」という在庫が、わずか10日でなくなってしまったという。「2回重版したのですが、それもすぐに売り切れてしまいました。特に宣伝していたわけでもないので、本当に異例のことです」(関根さん)
「品切れで手に入らなかった」という声も多かったことから、「2025年のお正月までに届けたい」と、1年という例を見ない速さでハードカバー化することに。こちらも11月13日の発売後すでに6刷を重ね、12月18日の時点で9万1000部を突破している。
読者からは一体、どのように読まれているのか。福音館書店に寄せられた読者の声には、「子どもとおせちを作るきっかけになった」「1品1品、由来を確かめながら一緒におせちを食べた」「子どもが興味を持っておせちを食べてくれるきっかけになった」といったものが多いという。
“食育”の観点から、栄養士や教員が関心を寄せるケースも。「小学校で読み聞かせたところ『これ食べたことがある!』といった声で盛り上がったとお話ししてくれた先生もいました」と、営業推進部宣伝課の大島麻央さんは話す。大人が「知ってる?」と問いかけながら読み聞かせることで、コミュニケーションが生まれる作品となっているようだ。
「知っているようで知らないという大人が多く、『子どもに伝統文化について分かりやすく伝えたい』『一緒に改めて学びたい』という潜在的な需要があったのだろうなと。海老の説明であれば『長寿』ではなく『ながいきできますように』のように(かみ砕いて)伝えているので、大人も伝えやすいのかなと思います」(大島さん)
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