ホンダと日産は、合併によって世界第3位の自動車グループを目指し、大きな利益を見込んでいる。しかし、中国の激しい競争により、それを実現するための時間的余裕があるかどうかに疑問が生じている。
両社は23日、合併に向けた正式な協議を開始することに合意したと発表した。結果はまだ不透明であり、問題を抱える日産の再建状況にも依存するが、2026年8月までに合意を最終決定することを目指している。日産の提携先である三菱自動車は、来月までに参加の有無を決定する予定だ。
両社は、共通のプラットフォームや研究開発(R&D)、共同調達を活用することで、1兆円(64億ドル)以上のシナジーを目標としている。また、年間3兆円以上の営業利益を目指している。これは昨年の両社の営業利益の合計と比較して54%の増加に相当する。
しかし、シナジーの全効果が現れるのは2030年以降になる見込みであると、ホンダの三部敏宏CEOは共同記者会見で述べた。それまでに中国の競合他社に対応する能力を構築しなければ「負ける」ことになると警告している。
アナリストは、それほどの時間があるかどうか疑問視している。
直面している最大の課題は、両社のモデルラインアップだ。特に電気自動車(EV)において強みを持っていない。日産は「リーフ」で早期参入を果たしたが、その後つまずいた。新型EV「アリア」はテスラの「モデルY」と競合するはずだったが、生産問題により出遅れた。
一方、ホンダはハイブリッド車に注力。日産とは異なり、需要が急増している米国市場にもモデルを提供している。
「両社は魅力的なEVモデルに欠けており、新会社でも新型EVモデル開発と技術研究開発(R&D)が課題になるだろう」と、米国の投資調査会社・モーニングスターのシニアアナリストは述べている。
標準化された車両プラットフォームの導入によりコストシナジーが期待されるが、その開発にも時間がかかるだろう。
中国では、電動車両への移行が進む中で、消費者の関心は車内ソフトウェア機能やデジタル体験にシフトしている。この分野では中国メーカーが卓越しており、BYDなどの中国ブランドは、革新的なソフトウェアを搭載したEVやハイブリッド車を次々と展開し、従来型自動車メーカーを追い越している。
ホンダと日産は、世界最大の自動車市場である中国でシェアを失いつつある。ホンダは先月、四半期利益が15%減少したと発表し、中国での労働力削減を進めている。日産は、世界全体で9000人の削減および生産能力の20%削減を発表しており、これには中国と米国での販売不振が影響している。
ムーディーズのシニアアナリスト、ディーン・エンジョ氏は、これらの中国事業の立て直しには「大きな実行リスク」が伴うと述べている。
ホンダは日本の第2位、日産は第3位の自動車メーカーであり、両社が統合すれば、トヨタとフォルクスワーゲンに次ぐ世界第3位の自動車グループとなる。
この統合は、2021年のフィアット・クライスラー・オートモービルズとPSAの合併(ステランティス設立、520億ドル規模)以来、業界最大の再編成となる。
中国企業からの脅威は、特に東南アジアなど、日本の自動車メーカーがかつて支配的だった地域で顕著であり、この合併の重要性を強調している。
モルガン・スタンレーのアナリストは今月初め、パートナーを見つけられない従来の自動車メーカーは、より小規模な企業になり、車両ごとの資本支出と研究開発費が増加するリスクがあると指摘している。
ホンダが“乗り物酔いしづらい”車を開発 きっかけは社員も酔ってしまった3列目
1時間に90本離着陸――なぜ、羽田ばかり超過密に? 「第三空港」「成田リニューアル」の可能性は
大量のデータでSuicaが超進化! 改札で「タッチ不要」が異次元のインパクトをもたらすワケ
Copyright © Thomson Reuters
Special
PR注目記事ランキング