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中国の人工知能スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)がウォール街の力関係を根底から揺るがす存在になるのか……。その結論はまだ出ていない。しかし、DeepSeekが、米国市場の特徴である高い集中度とリスクを支えてきた「米国例外主義」という考え方に対して、大きな疑問を投げかけているのは確かである。
シリコンバレーが世界的なAI競争の揺るぎないリーダーであるという思い込みは、近年米国市場が世界中から何兆ドルもの資金を吸い上げてきた主要な理由の1つである。この傾向は、米国の例外主義を象徴し、米国の成長とウォール街の収益の継続的な優位性への根深い信念を支えてきた。
しかし、先月までAIの世界以外ではほとんど名前すら聞いたことがなかった中国の新興企業のせいで、この物語が崩れ始めているのかもしれない。わずかな予算で運営されてきたDeepSeekは、AI技術の開発に数千億ドルを費やしてきた米国の巨大企業と同等か、それ以上の成果を上げているように見える。
「ディープシークの新しいモデルを見て非常に感銘を受けた。中国のこの進展を非常に真剣に受け止めるべきだと思う」と、Microsoftのサティア・ナデラCEOは先週ダボスでCNBCに語った。
特に、米国株式市場、さらには世界市場全体の行方が、わずかな企業とAI関連の話題に大きく依存している現在、投資家たちはこれを真剣に受け止めるべきだろう。
1月27日の暴落前、過去2年間でS&P500種株価指数に約700ポイント貢献したのは、NVIDIA、Microsoft、Alphabet、Amazon、Metaのわずか5銘柄だった。「これらの銘柄を除くと、S&P500種指数は12%下落していた」と、仏金融機関Societe Generaleのマニッシュ・カブラ氏は指摘する。1月27日までのS&P500の2年間の上昇に、NVIDIAだけで4ポイントも貢献している。
ドイツ銀行のジム・リード氏によれば、NVIDIAの直近の四半期決算で報告された過去12カ月の利益は約630億ドルで、これは昨年1年間に英、独、仏の各上場企業が上げた利益の約半分にあたる。
Bank of Americaのアナリストによれば、これらの企業にAppleとTeslaを加えた 「マグニフィセント・セブン」(Mag 7)は、過去2年間のS&P500の上昇分の60%近くを占めている。
要するに、「Mag 7」はS&P500における「アメリカ例外主義のプレミアム」を体現しているとカブラ氏は述べている。
ウォール街がこれほど少数の銘柄に肩入れしたことはなく、「Mag 7」は現在、S&P500全体の時価総額の35%以上を占めている。一方、米国株は現在、世界の株式配分の3分の2を占めている。
これは資金流入の好循環によるところもある。「Mag 7」銘柄が上昇するにつれ、米国が世界株式の時価総額に占める割合がますます大きくなっている。つまり、パッシブ・ポートフォリオを保有する投資家は、米国株へのエクスポージャーを増やし続けなければならず、価格上昇に拍車が掛かり、さらなる購入が必要となる。
しかし、アリゾナ州立大学のヘンドリック・ベッセンビンダー教授(金融学)が2023年に行った研究 「1926年から2022年における株主富の拡大」で指摘しているように、市場の集中は以前から進んでいる。彼は、1926年から2022年までに上場した米国企業2万8114社のうちわずか3%が、その間に創出された55兆ドルの株主富のほぼ全てを生み出していることを発見した。
Appleだけで全体の5%近くを占め、Apple、Microsoft、Exxon Mobilの上位3社を合わせると10%を超える。
この集中は近年ますます加速している。2016年、株主総資産の10%を創出するために必要な企業数は7社だった。これが2022年には4社に減少する。
Bank of Americaのアナリストが示唆するように、これは「Peak Monopoly」(独占のピーク)を表している可能性がある。そして歴史が示す通り、破壊的な技術が登場するため、独占は永続しない。
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