JR西日本のお客様センターが、生成AI活用を強化している。このお客様センターを運営するJR西日本カスタマーリレーションズはこれまでも、東京大学松尾研究室発のAIベンチャーのELYZA(イライザ、東京都文京区)と協業して生成AI起点で業務フローを見直し、オペレーターの業務効率化に取り組んできた。
問い合わせの要約作業は、1件あたり65秒削減。顧客の声(VoC:Voice of Customer)を把握するために週報を毎週作成していたが、その作業時間は約2時間から30分に省略されるなど、目まぐるしい成果を上げてきた。
昨今、コンタクトセンターに寄せられた顧客の声をデータ化、分析し、マーティング活動に利用しようとする企業が増えている。JR西日本のお客様センターでは、生成AI活用によって業務の効率化にとどまらず、VoC活用の可能性も広げているという。
鉄道関連の問い合わせを扱うJR西日本お客様センターには、1日2500件の問い合わせが寄せられている。内訳は電話が約2200件、メールが約290件で、そのうちより重要度の高い「ご意見・ご要望」は約75件程度だという。
同社のコンタクトセンターでは人材獲得が困難、オペレーターのスキルに個人差があって対応品質にばらつきがある、VoC分析に一部の声しか活用できていない――という3つの課題があった。堤恵理子代表取締役社長は、これらの課題解決において生成AIに大きな期待を寄せたといい、生成AI起点で業務フローの見直しを実施した。
同社では問い合わせが発生したら、その応対履歴を全て要約して保存。それらのデータから顧客ニーズや問い合わせの傾向などを分析した後、事業運営に反映するため、各種関連部署と連携している。
これまでは、問い合わせ対応後にオペレーターが応対履歴の要約を作成し、上役のスーパーバイザーが一つ一つをチェックしていた。これを、通話内容を音声認識でテキスト化し、AIが自動的に要約を作成するフローに変更。各オペレーターのスキルの違いから要約の品質にばらつきが生まれていたが、生成AIを活用することでデータが均質化した。
また、今まではリソース不足が原因で、VoC分析の対象を一部の重要度が高いデータのみに絞って集計していたが、生成AIの導入によってデータ全件を対象に分析できるようになった。データを処理して「タグ」と「カテゴリー」を付与し、ダッシュボードで管理している。
ダッシュボードでは、地域ごと、駅ごとにデータを表示したり、キーワードを絞って検索したり、VoCの傾向を一目で把握できる。ダッシュボードで可視化することで、商品やサービスの課題、成果をリアルタイムで確認できるようになった。
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