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「こんな人が欲しいんです!」と力説する企業が、採用に苦戦するワケ(1/2 ページ)

» 2025年01月29日 07時00分 公開
[平田拓嗣ITmedia]

筆者プロフィール:平田 拓嗣

AIスタートアップABEJAの初期メンバーとして入社。HR部門でビジネスサイドからAIエンジニアまで幅広い職種の採用に携わる。その後、HRBPとして独立。ジャンルを問わず、様々なフェーズのスタートアップ・ベンチャー及びVCのHR支援に従事。各社経営陣に伴走し、ハンズオンで支援を行う。2018年に株式会社Haulを創業。


 「いい人材が集まらない」。多くの企業の採用コンサルティングや実務に携わり、人事・採用担当者と面談をしてきた筆者がよく聞く悩みだ。中途採用の募集をかけて内定を出しても、辞退されるなど壁に突き当たるのは、採用プロセスに課題があるケースが大半だ。要因は大きく3つのパターンに分けられる。

 中途採用の企業間競争は激しくなっているが、採用難を人手不足のせいだけにしてはいけない。本稿では前半は採用に苦戦する会社の特徴を挙げ、後半は候補者と採用側双方の理解の深め方や、採用方法を見直しエンジニア採用を成功させた実例をお伝えする。

厳しい中途採用……うまくいかない採用「3つの共通点」

 まず、中途採用の厳しさを示すデータを紹介したい。リクルートワークス研究所の調査によると、2023年度下半期の中途採用で、必要な人数を「確保できた」企業の割合と「確保できなかった」企業の割合の差は−7.7ポイントと、比較可能な2013年度下半期以降、最も低い値になった。

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 人材獲得競争が激しくなる中、採用がうまくいかない会社には3つの共通点がある。

(1)自社都合の採用プロセス

 面接回数や面接官を、企業側の都合で決めているケース。候補者が何を期待しているか掘り下げずに、採用マニュアルだけに縛られている。

 筆者が実際に聞いた事例では、内定した人が家庭の事情で「回答までに2〜3週間待ってほしい」と申し出たところ、「うちは回答期限が1週間以内です」と断られたという。候補者の心情や立場を考えているとは思いがたい。

 採用側からは「多くの人の面接をするので、一人一人に目線合わせをしていては採用効率が上がらない」といった背景も聞く。ただ、後述するがこれではかえって採用効率を下げてしまう。

(2)候補者へ面接のフィードバックをしない

 面接後の連絡を「一次面接を通過しました。二次面接の日程調整をしましょう」など、調整だけに終始してしまうパターンだ。

 「あなたのどんなところが良かった」「次は誰とどんな話をしてほしい」といったフィードバックがないと、候補者は不安を抱いてしまう。「自分たちが候補者を選ぶ」という上から目線になってしまっていないか、振り返ってみてほしい。

(3)企業側の採用ニーズだけ伝える

 「うちはこんな人材がほしい」と、企業が求めることだけを一方的に伝えてしまうことは、意外と多い。

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 エンジニアなど売り手市場の転職では、転職することでどんなスキルを身に付けられるかが重視される。候補者に「あなたがうちに来てくれたらこんなスキルが身に付く」とメリットを伝えたい。説明不足は内定辞退を招いてしまう。

ミスマッチの要因は度を越した「スペック重視」

 採用がうまくいかないのは、企業と候補者のミスマッチが生じるからだ。採用側は「学歴や職歴が立派なものか」、候補者は「会社が成長しているか」というスペックだけを重視し、深い部分での相互理解がないまま、採用に至ってしまう。これはマッチングアプリで相手の見た目やスペック重視で出会った恋人たちが、すぐに別れてしまうケースに似ている。

 企業側は採用スキルの不足と、同じチームで働く上で何を大事にしたいか、会社のビジョンを実現させるにはどんな人材が必要かといったところまで深掘りせずに、半ば諦めながら採用しているという実態もある。

 もちろん企業側だけに問題があるわけではない。候補者は本来なら自己分析などで「自分らしさ」などさまざまな要素を踏まえて、エントリー企業を決定した方がいい。しかし、売り手市場であるため「自分がやりたいこと」だけで会社を選び、転職する人が多い。結果として短期離職を繰り返すことになる。

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