採用戦略を立てる際、「Who(誰を採用するか)×What(何を訴求するか)→How(採用方法)」の順で考えていくのが王道だ。マーケティング手法と似ているかもしれない。
筆者が採用担当者との面談で感じることは、WhoとWhatがあいまいなまま、Howの差別化に走る企業が非常に多いことだ。WhoとWhatがぼやけたまま数に走ることになり、採用が非効率になってしまう。
採用ペルソナの具体的な設定や、自社の魅力が整理されていなければ、いい人材を採用することは難しい。
内定承諾率の向上を狙うなら、まずはこの3つを整えたい。
実際に、AIを搭載した内定承諾率向上ツールを用いて、それまで苦労していたエンジニア採用において成果を出したakippa(アキッパ)社の事例を紹介したい。
アキッパではエンジニア採用において、内定承諾率の低さがボトルネックになっていた。面談でも自社の思いや魅力が十分に伝えきれていなかったため、ツールを導入した。
面接を終えた候補者にアンケートを送付。回答内容をAIが読み取り、採用担当者が候補者に送る「オファーレター」の作成をサポートする。アンケートを基に、具体的な採用理由などを盛り込み、内定承諾率を上げることを狙った。
導入後初のオファーは残念ながら辞退となったものの、採用担当者は「辞退する場合でもこんなに丁寧にアンケートに回答してもらえるのか」と驚いたという。こうした候補者によるフィードバックから自社の強みと弱みを洗い出し、選考プロセスや発信内容を見直した。オファーレターでも「なぜあなたに来てほしいのか」という理由を明記した。
結果としてはエンジニア4人、人事担当1人の計5人の内定承諾につながった。「中でも事業を支えるテックリードとCHROの入社は非常に事業貢献度が高かった」と、採用担当者は振り返る。
内定者は「『なぜあなたに来てほしいのか』『どこが良かったのか』というメッセージから、入社したときのイメージがわいた」「面接で実際に話をした人たちからのメッセージが、私の話を踏まえた内容で、心が動いた」という。
採用は量から質を重視するものに、企業側は人材から選ばれる時代へ変わってきている。
企業は、募集するジョブに候補者がマッチするか、学歴や職歴だけではなく「企業文化によい影響をもたらすか」「信頼でき一緒に働いていきたいか」ということにも目配りするべきだ。
候補者は、企業の成長性や、自身のスキルにマッチするかだけではなく「自分の価値観とフィットし、自分の強みを生かしながら生き生きと働ける会社かどうか」という視点も大事にしながら転職活動をしてほしい。
双方の定性的な特徴を可視化し、データも踏まえたマッチングができれば、採用の現場は変わるだろう。
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