1号店は苦戦!? 「いきなり!ステーキ」の次は「肉だけ、野菜なしのすき焼き」 ペッパーフードの新業態は成功するのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/3 ページ)

» 2025年02月05日 14時45分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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すきはなと好対照な「ちかよ」

 すきはなに先行して、肉だけの1人すき焼きを提供してきた店がある。江ノ島と渋谷にある「ちかよ」だ。2022年10月、小田急線の片瀬江ノ島駅前に1号店を出店。この店が評判となり、2023年9月、渋谷にも2号店をオープンした。こちらも人気店で、渋谷店を見る限り、20〜30代の若い人や、インバウンドの顧客が多い。

ちかよ渋谷店(筆者撮影、以下同)

 ちかよという店名は、店主の母の名前に由来する。奈良の実家で母が作ってくれたシンプルな“焼きすき”を再現したという。具材は肉だけで、割下を使わずしょうゆと砂糖だけで味付けている。店主は偏食で野菜が食べられないので、肉だけのすき焼きになったとのことだ。

ちかよは、店主の母親の名前だ

 上質な肉をじっくりと焼き上げるために炭火にこだわり、専用の鋳鉄鍋を燕三条の三条特殊鋳工所と共同開発。ご飯には「西の横綱」と称される、父の実家で栽培した島根県産コシヒカリの「仁多米」を使っている。

 セットメニューは、肉の量が60グラムの「【ミニ】すき焼き」(2270円)、同100グラムの「すき焼き」(2980円)、同130グラムの「【特上】すき焼き」(3980円)のみ。黒毛和牛ロースに、ご飯と赤出汁と「マキシマムこい卵」、ゆずと白菜の漬物が付いてくる。すきはなと同様に店員が肉を調理し、焼き上がった肉をご飯に乗せて食べる「焼き牛丼」のような多くの画像がSNSに上がっている。

店舗で提供するメニューの一例

 店主が子どものころから食べていた家庭料理をブラッシュアップしたものであり、さらに専用の鋳鉄鍋や仁多米にもストーリーがあることから、人気を博しているのだろう。店の外観もガラス張りで入りやすいのは大きい。

ちかよ、調理風景

 メニューの内容だけ見ればあまり差がない「すきはな」と「ちかよ」であるが、飲食を通じて伝えたいことの「想いの差」が、現状の集客の差として顕在化している感がある。とはいえ、すきはなもオープンしたばかりで、改善の余地はいくらでもある。

野菜がない、焼きすきスタイルの定食となっている
ご飯に乗せて、焼きすきをオンザライスで

 ぺッパーフードサービスは、いきなり!ステーキの不採算店整理を終え、ようやく攻勢に出られる体制になった。店舗数は2019年末に500店近くあったのが、現在は175店(24年12月末)まで激減。2024年1〜12月の既存店売上高は前年同期比103.1%とプラスになった。2024年12月期第3四半期(1〜9月)決算でも、経常利益4100万円と、わずかながらも利益が出た。前年同期が5億5600万円の経常損失だったので、大きく改善している。

 すきはなの目標は30店とのことだが、達成するまで改善を続けてほしい。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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