長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。
「いきなり!ステーキ」をチェーン展開するペッパーフードサービスは、2024年12月6日にすき焼きの新業態「すきはな」を、東京・新橋にオープンした。店内はコの字型カウンターで、和牛・国産牛を1人すき焼きとして楽しむ店だ。ご飯とみそ汁、漬物が付いた定食形式で提供している。1人焼肉を定食で提供する「焼肉ライク」のすき焼き版、といったイメージだ。ちなみに焼肉ライクも、1号店は新橋に出店していた。
すきはなの価格帯は焼肉ライクと大きく異なる。焼肉ライクは1000円以内でも焼肉を楽しめるコスパを重視したチェーンだ。一方のすきはなは、高級な和牛・国産牛を使っており、最安の定食でも1980円。一般のビジネスパーソンが日常的に利用するにはやや高めの価格帯だ。自分へのご褒美で、月に一度か二度、行けるかどうかという店だ。
ステーキを立ち食いスタイルにして価格破壊したのがいきなり!ステーキだったが、ランチ時間帯は商品によっては今でも150グラムで1500円を切る価格でステーキを定食で食べられる。すきはなも、高級すき焼きとしては十分に安い。しかし、インバウンドも狙っていることから輸入肉を使っていないので、インパクトとしてはいきなり!ステーキの価格破壊ほど振り切っていない感がある。
しかも、すきはなのすき焼きには野菜や豆腐といった具材はなく、肉だけを出す非常に特殊な内容だ。吉野家やすき家の「牛すき鍋」では、牛肉のみならず、野菜も取れるのが売りになっている。
果たして1人すき焼きは成り立つのか、すきはなを取材した。
すきはなの1号店は、地下鉄銀座線の新橋駅・3番出口を出てすぐにある路面店で、パッと見た外見は料亭のようであり、格式高い感じも受ける。いかにも、ハードルが高そうだ。同じ通りの斜め向かいには「俺の」シリーズの「俺のやきとり」「俺の焼肉」などがあり、すきはなが狙う顧客層が何となく見えてくる。銀座エリアに隣接しており、インバウンドの顧客も狙える、万全の立地を確保したのではないだろうか。
筆者が訪問したのは、平日の午後7時半頃。ちょうど夕飯時だったが、先客は誰もいなかった。その後30分ほど滞在したが、中国系と思しきカップルと、50代くらいの男性1人が来店したくらい。店内は閑散としていたが、時折客が訪れていた。
店に入ると、まるで美術館のような白壁の内装が迎える。コの字カウンターの奥には、大きめなサイズの盆栽が置かれており、その手前、店の中央にはかまどが同店の支配者のように鎮座していた。すき焼きの店ならば肉が存在感を放つべきところで、やや不思議な感じを覚える。
コの字カウンターには、各席の前にIHコンロが備え付けてあり、店員が鉄鍋を使って肉を調理する。メニューは「国産牛」「黒毛和牛」「ブランド和牛」のすき焼きセットのみ。価格はそれぞれ、1980円、2530円、3850円である。この日のブランド牛は松阪牛だった。
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