東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査で、日産と主要グループ企業(以下、日産グループ)と取引する国内企業のうち、部品メーカーを中心とした中小企業の直接仕入先(1次中小サプライヤー)の最新期決算は4割が減益で15%が赤字であることが分かった。
日産自動車と、同社の2024年3月期有価証券報告書に記載のある国内関係会社17社の仕入先・販売先を抽出すると、1次2次含めて1万3283社(重複排除)が該当する。
このうち、1次仕入先で銀行や金融・保険業を除き、資本金1億円未満の中小企業を対象に3期連続して業績(売上高・最終利益)を比較できる1060社を分析した。最新期(2023年度)の売上高合計は3兆6034億8400万円で前期から7.3%の増加、さらに2期前の前々期から16.9%の増加と増収が続いている。一方、利益は最新期が1133億7400万円で前期から25.0%増加しているものの、前々期と比べると8.3%減少している。
資本金1億円以上の大企業477社でみると、最新期の売上高合計は58兆7061億4800万円で前々期から21.4%増と大幅に増えた。利益も4兆3573億6300万円と、前々期から69.0%増と伸び、中小企業と比べて大企業の業績伸長が目立った。
同じ条件でホンダグループの1次中小サプライヤー1529社を分析すると、利益は前々期から11.2%増の1321億4300万円と回復していることから、日産グループの1次中小サプライヤーの利益は厳しい状況がうかがえた。
日産グループの1次中小サプライヤーを売上高別でみると、最多は「10億〜50億円未満」の368社(構成比34.7%)だった。次いで「1億〜5億円未満」の248社(同23.4%)、「5億〜10億円未満」の145社(同13.6%)。100億円以上が69社(同6.5%)あったものの、1億円未満も131社(同12.3%)、売上高10億円未満は合計49.4%で半数近くを占めた。
最終利益別では、最新期が黒字だったのは898社(構成比84.7%)、赤字は162社(同15.2%)だった。前々期の赤字企業率20.4%から5.2ポイント改善したものの、厳しい経営が続いている。
また、資本金1億円以上の大企業では、最新期の赤字企業率は10.2%で中小企業より5ポイント低かった。さらに最新期を対前年増減益でみると、増益企業率は51.7%に対して減益企業率は40.8%、減収減益だった企業は19.8%に達し、業績が悪化しているサプライヤーも多いことが分かった。
東京商工リサーチは「日産自動車は、ホンダとの経営統合の打ち切りが報じられ、世界第3位の巨大グループを目指した交渉は暗礁に乗り上げた。日産グループのサプライヤーの中には、すでに経営が悪化している企業もある。ターンアラウンド(事業再生)が必要な日産にサプライチェーンを俯瞰(ふかん)する力が残されているのか、心配の声は絶えない」とコメントした。
今回の調査は、日産グループと取引する国内企業1万3283社を対象に実施した。
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