この事例のように、自分の情けなさをやたら嘆く人の場合、嘆くことで気分をスッキリさせているということがあり得る。自分が仕事ができないという思いや周囲に負担をかけているといった思い、つまり心の中の重荷を抱え続けるのが耐えられないという、いわゆるレジリエンスが低い人の場合、安易な方法で楽になろうとしがちである。
つまり、人に嘆くことで手っ取り早く楽になれる。でも、いくら気分が楽になっても、それでは何も改善されない。嘆くことで一時的に気分が楽になっても、自分が仕事ができないという状況は何も改善されていないため、またすぐに気分がめいってくる。
大事なのは、仕事のやり方を改善し、できるようになり、周囲に負担をかけるようなことがなくなることによって、本格的に気分を楽にすることである。楽になる方法が間違っているのだ。
まずは、このようなことに気づいてもらうことが必要である。少しずつでいいので、仕事のやり方を身につけていき、できるようになっていく。それによって気分も楽になる。そのような方向に目を向けてもらうように対話をしていく。
そこを分かってもらえたら、自分はなぜ仕事がうまくできないのか、どこがまずいのか、といった自分自身の現状を振り返るように導く。このようなタイプは、自分自身の現状を振り返るという意味でのメタ認知を起動する習慣ができていない。それを起動させる必要がある。
自分自身の現状に問題があることに目を向けるようになったら、どんなことができるようになればいいのか、そのためにはどんなことに注意したらよいのか、といったことを考えるように導く。
メタ認知的コントロールへと一歩を踏み出させるのである。メタ認知的コントロールというのは、自分の現状を振り返るというメタ認知的モニタリングを踏まえて、現状を改善すべく工夫することである。この場合で言えば、自分の問題点を踏まえて、仕事への取り組み姿勢を改善していくことである。
自分の力量に気付かず、「できる人」のようにふるまって迷惑を掛ける人、取引先に一緒に行っても、まったく違う理解で物事を進めてしまう人、状況の変化に対応できず、すぐにパニックになってしまう人、そもそも「指示通り」に動くことが難しい人……。そういう職場にいる人たちを紹介しながら、その改善策も一緒に考えていく本。
そういう人たちの深層心理を理解することで、改善策にも近づくことができる。さまざまなケースをもとに、心理学博士の著者と悩める上司の会話で文章を展開。
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