この記事は、榎本博明氏の著書『「指示通り」ができない人たち』(日経BP 日本経済新聞出版、2024年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
個を生きる欧米人などと違って、私たち日本人は人との間柄を生きているといった感じがある。仕事をするにも、仕事そのものだけでなく、職場の雰囲気や人間関係がとても気になる。ゆえに、仕事自体には不満はないけれども職場の雰囲気が合わないというようなことも、しばしば起こってくる。
ただし、本人は職場の雰囲気に問題があると思っていても、じつは本人の仕事への取り組み姿勢に問題があるということも珍しくない。メタ認知ができていないため、本人はそこに気付いていないのである。
そのような部下への対応について悩んでいる管理職は、次のように事情を語る。
「いつも不満顔を見せることが多い部下が相談があるっていうから、個別面接の時間を取って話を聞いたんです。すると、仕事そのものには別に不満はないけれども、職場の雰囲気が悪いからやる気になれない、って言うんです」
『職場の雰囲気ですか』(筆者、以下同)
「ええ。自分は職場の雰囲気が良ければモチベーションを上げて頑張るタイプなのだけれども、今の職場の雰囲気ではどうしてもモチベーションが上がらず、仕事も適当になってしまう、そんな自分は嫌なので何とかしてほしい、そんなふうに言うんです」
『そうですか。職場の雰囲気がどのように悪いっていうんでしょうか?』
「いちいちうるさいことを言う人がいる、お局様みたいな人がいつもみんなを見張っていて雰囲気を悪くしているとか言うんです。『私がミスをするたびに、そのお局が鬼の首でも取ったかのように指摘してくるんですよ。それも毎日何回もですよ。やってられませんよ』って言うんです」
『お局様みたいな人に見張られ、いちいちうるさいことを言われる、と』
| 筆者プロフィール:榎本 博明(えのもと | ひろあき) |
|---|---|
MP人間科学研究所代表、心理学博士
1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学助教授等を経て、現職。
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