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転職応募数が1.6倍に 「doda」のオン・オフライン全てのデータを活用したCX改善は何がすごい?(前編)アドビが聞く「実践! CX改革」(2/2 ページ)

» 2025年02月20日 07時00分 公開
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応募者1.6倍に CX改善で得た2つの効果

小松崎: CX(Customer Experience)改善に寄与した施策など、具体的な例がありましたら教えてください。

アドビ DXインターナショナルマーケティング本部 フィールドマーケティングマネージャー 小松崎扶美恵

小林: CX向上実績の1つに「行動データの詳細化によるレコメンドアルゴリズムの精度向上」があります。

 カスタマープロダクト本部には、レコメンドアルゴリズムや内製モデル開発に従事するデータサイエンス組織が存在し、事業部を越えて、各種施策の裏側で動くモデルの構築や検証をしています。

 そこで展開されているモデルのロジックでは、特定のメール経由での応募行動や求人接触行動、回遊といったユーザー起点の各種行動データも志向性の1つとして採用しています。このモデルによるレコメンデーション施策をWebサイトやアプリの導線、プッシュ通知で展開し、その成果を行動データの1つとして再計測・再演算することでモデルをブラッシュアップ。マッチングの精度向上に努めています。これが応募数の成長につながりました。

小松崎: どれくらい応募数が伸びたのでしょうか。

小林: データサイエンスのアルゴリズムによる「ユーザー×求人」の選定をした求人訴求メールテストを、当時のメール施策チームとデータサイエンティストで実施したところ、それまでにない成果が上がり、さらにロジックの精度向上が進められました。

 例えば、応募に至っていないユーザーに対しては、 「ブックマーク」や「求人の閲覧」などの行動データを用いて、アルゴリズムの複数展開や個別チューニングをしました。応募数は当時と比較して160%増加と、成果が生み出されています。

 プロダクト(サイト/アプリ)上での行動データを収集、分析し、マーケ・プロダクトのDWH/DMを活用。さらに応募以降の選考過程のデータとも連携し、ファネル全体の行動分析をすることで、広告やSEOからの来訪、そこからの何%がどのような行動をして会員になったのか、もしくは求人への応募に至ったかーーこれらのデータで、より精度の高い評価が可能になっています。

 またCX改善効果についてですが、間接的なものとしてもう1つあります。

 DWH/CDPで蓄積されたプロファイルデータや選考過程の結果などをAdobe Analyticsと連携することで、従来DWHやCDPで行っていた高度な分析をAdobe AnalyticsのWebUI上でも再現可能にしました。これにより、 評価分析と新規機能企画の横展開やサイクルが大きく改善しています。

 レコメンデーション以外にも、行動履歴データを交えることでアップセルやクロスセルを促す取り組みが進められたり、行動分析を精緻化したりする試みが行われるなど、サービスとして成果が上がっています。

データの拡大+人材の成長が成功の鍵

小松崎: 「レコメンドメールのロジックを変えて転職応募数を1.6倍向上した」とのことですが、こうした成果が達成できたのは理由は何だとお考えですか。

小林: 大きく2つの理由があると思います。まず使えるデータを拡大していったこと。もう1つは、アルゴリズムを施策まで落とし込める人材・組織が育ったことです。

 もともとのレコメンデーションロジックは、外販ツール依存の機能を用いたものでしたが、内製でのデータ拡大とアルゴリズム開発をしました。これにより柔軟かつ高い効果が得られる機能を開発でき、それを小規模な施策で検証することで、検証のサイクルや横展開が迅速化できました。

 先ほどお話しした「dodaでのブックマーク行動の傾向」を取り入れたのもこの1つです。以前は「表層行動が類似しているユーザーに対するレコメンデーション」だけでしたが、ブックマークなどユーザーの志向性を分析できる行動データや、「特定の求人情報接触」といったポイント行動のロジックも追加しています。こうした工夫を重ねることでカスタマーのサービス利用をより前に進めることができ、より精度高く広範囲なパーソナライズを実現できたのだと考えています。

小松崎: データエキスパートである小林さんだからこその功績ですね。データ活用の人材・組織の育成については、後編で詳しく伺いたいと思います。

右:パーソルキャリア P&M本部 データビジネス部 小林裕也氏、左:アドビDXインターナショナルマーケティング本部 小松崎扶美恵氏

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