「廃棄される牛」に再び光を 仕入れコスト3分の1で黒毛和牛を提供可能に 社長が語った“苦い記憶”とは(5/5 ページ)

» 2025年02月27日 07時00分 公開
[大久保崇ITmedia]
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次は乳用のジャージー牛。“捨てられる命”を価値あるものにしたい

 外国人実習生との出会いから始まったフードロス削減への取り組みは、HIRの事業の根幹となった。小林氏の挑戦は廃用牛の再利用だけにとどまらない。次なる開発テーマとして見据えるのは、乳用のジャージー牛だ。

 「食品ロスに向き合う過程で気づいたのは、捨てられる運命にある食材がたくさんあるということ。ジャージー牛もその一つです」と小林氏は説明する。

 ジャージー牛は乳用牛として知られているが、肉用としてはほとんど流通していない。しかし、その特性に小林氏は大きな可能性を見出している。「ジャージー牛は赤身が多く、筋トレをする方やスポーツ選手にとって理想的な食材になり得ます。ヘルシーな赤身肉として、新たな市場を開拓できる可能性があるんです」(小林氏)。この取り組みも廃用牛と同様、一頭丸ごと買い取って加工する計画だ。すでにレシピ開発は完了し、現在は生産ロットの調整段階にあるという。

 また、牛乳の廃棄問題にも取り組んでいく。北海道には冷蔵庫、冷凍庫に次ぐ第三の鮮度保持技術と呼ばれる新しい保存技術を持つ倉庫がある。そうした最新技術を活用し、牛乳の廃棄量削減に取り組む予定だ。

 こうした食品ロス削減の取り組みは、同社の採用支援事業とも連動している。「事業承継時には人手不足で苦労しましたが、採用ノウハウを生かして克服しました。この経験を北海道の外食産業に還元しながら、EC事業でも雇用を生み出していきたいと考えています」(小林氏)。

 フードロスの削減、畜産農家の支援、そして雇用の創出ーー。「日本の食材を、日本の食卓に」という思いから始まった小林氏の取り組みは、持続可能な食のエコシステム構築へと広がりそうだ。

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