和牛価格の高騰が続く中でHIRが着目したのは、出産を重ね、本来なら価値が低いとされてきた“お母さん牛”だ。こうした乳量低下や出産能力の衰えた牛は「廃用牛」とされ、ペットフードや低級ひき肉にしかならない運命にあった。小林氏が取り組んだのは、この「廃用牛」の持つ可能性を、再肥育という手法を用いて引き出すことだ。
廃用牛の再肥育は、通常の肥育と比べて大きな優位性を持つ。小林氏によれば「一般的な肥育と比較すると配合飼料を3分の1に抑えられるのに、短期間でA3ランク程度まで肉質を向上できる」という。
環境面での利点も大きい。「約20カ月間子牛を生み続けてきた母牛の再肥育期間はわずか3〜6カ月程度で済むため、牛のゲップに含まれるメタンガスの排出量も抑えられます。限りある穀物資源の効率的な利用にもつながり、SDGsの観点からも社会貢献性の高い取り組みだと自負しています」(小林氏)。
同社の廃用牛活用における最大の特徴は、一頭丸ごと仕入れる「一頭買い」方式だ。焼肉店などで好まれるヒレやタンなどの高級部位は自社の焼肉店で提供し、その他の部位をハンバーグの原料とすることで、無駄のない活用を実現している。これにより、同じランクの和牛を通常の流通ルートで仕入れる場合と比較して、3分の1の価格に抑えられる。
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