一般的に廃用牛を活用した商品開発では、特定の部位のみを仕入れてハンバーグなどに加工するケースが多い。しかし、HIRは焼肉店を運営していることもあり、一頭買いによる独自のビジネスモデルを構築できた。
「当社の焼肉店では黒毛和牛の食べ放題メニューを提供していますが、これは廃用牛の高級部位を効率的に活用できるからこそ実現できました」と小林氏は説明する。他の飲食企業がハンバーグを製造する場合、食肉加工会社から必要な部位だけを仕入れるのが一般的だ。しかしその方法では原価率を下げることには限界がある。
HIRの場合、再肥育した廃用牛を一頭丸ごと仕入れることで仕入れコストを大幅に圧縮。ヒレやタン、サーロインなどの高級部位は自社の焼肉店で提供し、その他の部位をハンバーグ用の原料として活用している。
OEM(相手先ブランドによる生産)で完成品のハンバーグだけを仕入れて販売する方法もあるが、自分たちで肉を持ち込み、レシピを渡して加工してもらうことで、加工賃だけで済ませているという。結果として、同じ品質のハンバーグが半額以下のコストで製造できている。
こうしたコスト優位性を生かしながらも、味に妥協はしない。ハンバーグは東京・港区の星付きシェフが監修したレシピで仕上げることで、付加価値を高める取り組みを行っている。「ミシュラン星付きレストランシェフ監修の黒毛和牛100%ハンバーグを、一般家庭でもお求めやすい、1個あたり500〜600円という価格で提供できるのです」と小林氏は語る。
実際このハンバーグの人気は上々だ。2025年1月の販売開始から1カ月で、Amazonだけで200セット以上を売り上げた。牛1頭からは約1500個のハンバーグが製造でき、6個入りで250箱ほどの商品になるという。
「この取り組みは、日本の畜産業の根幹を支える繁殖農家にも希望をもたらすはずです。北海道の食材を全国に届けられることに加え、廃用牛を活用することでこうした農家への利益還元も実現できると考えています」と、小林氏は持続可能な畜産の未来を見据える。
悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に
“USJ流”は通用しないし、やらない――ジャングリア沖縄、運営会社の挑戦
「うどんみたいな布団」が突如爆売れ、Xで16万いいね 「売れたらラッキーくらいに思ってた」と担当者
カセットガスで「暖炉のある暮らし」に 開発者の執念がヒット商品に
「ポケモン赤」が600万円超で落札――米オークション会社、日本市場に熱視線Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング