こう書くと、政府や企業が一般の人々を置き去りにして国際競争力の強化にまい進しているように見えるかもしれない。ただ、少なくとも日本が国際競争にさらされていることは明白な事実であり、そこで戦わなければならないという現実がある。そのため、政府や企業がやろうとしていることは、一面では正しいのである。政府であれ企業であれ、日本を悪くしてやろうと思ってこうした再開発を進めているわけではないのだ。
問題は、私たち個人が国家や企業ではないということだ。国家間競争という巨大な目的と、今ここに生きる小さな私たちが求めるものは、時として反対の方向を向くことすらある。最もシンプルな再開発の目的は「道が狭い」「建物が古くなって使いづらい」といった、生活レベルで生じる問題を解決することだ。もちろん最近の大規模再開発でも、防災面の強化や交通動線の整理など、そうしたことは意識されている。しかし、そうしたミクロレベルの問題解決よりも、マクロレベルでの問題解決が優先されてしまっている一面があるのも事実だ。
現在、再開発についてはさまざまな意見が出ているが、そこで起こる不満や対立は、このマクロとミクロの目的の食い違いによって生じているのではないだろうか。国際競争力を高めるためにはより巨大で、効率的な都市を目指す必要がある。しかし、私たちの生活レベルからすれば、そうした都市が増えてしまうと、息苦しく感じてしまうことは往々にしてある。
また、人口減少が著しい日本において、そうした「強さ」を求めていくことは最善の策なのだろうか。関係者から聞くところによると、都心でさえオフィスの空室率が目立ってきているそうだ。いくら国や事業者側が東京、ひいては日本を強くしようとしても、実際に動かすのはミクロなレベルにいる現場の人間だ。その人間が少なくなっている現状では、そうした方向性で行われる再開発が、本当に望ましいものなのかは断言できない。
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