「京都北白川 ラーメン魁力屋」を展開する魁力屋は、2023年12月にスタンダード市場へ上場した。創業は2003年だが、魁力屋の1号店を出店したのはその2年後だ。関西を中心に店舗を拡大し、2009年に神奈川県で関東初進出。近年はフードコートにも出店している。2024年12月末時点で、魁力屋を主力ブランドとして、その他も含めると合計161店舗を展開する。2024年11月には海外進出を目指して台湾法人を設立している。
ラーメンの種類は比較的豊富だが、中心は「京都背脂醤油ラーメン」だ。京都発ラーメンの一種で、スープの上に煮込んだ豚の背脂を振りかけていること、中心にネギが載っているのが特徴である。背脂を振りかけるときの動作から「チャッチャ系」とも呼ばれる。文字だけだと脂っこい印象を受けるが、スープ自体はあっさり目であり、背脂が加わることによるバランスの良さが評価を受けている。
都内に19店舗しかないため、首都圏での知名度は町田商店や博多一風堂ほど知名度は高くないかもしれない。チャッチャ系自体も、家系ほど一般化していない印象がある。しかし、町田商店が家系を一般化させたように、魁力屋自体がチャッチャ系の知名度を左右する可能性は高い。
牛丼業界では吉野家・松屋・すき家の「御三家」がシェアのほとんどを占める。ある程度確立されたジャンルであり、オペレーションも効率化されているため、なかなかほかのチェーンが入り込む余地はない。また、バーガー業界はバリエーションが豊富で個人経営のような店もあるが、チェーンといえばマクドナルドやモスバーガー、ケンタッキーやバーガーキングなど一部に限られる。
対してラーメン業界は大手の占有率が低い点が特徴だ。ラーメン店は全国に2万店以上あるが、1000店舗を超えるチェーン店はなく、700店舗超を展開する餃子の王将でも、シェアは5%を下回る。ラーメンはレシピのジャンルが豊富で、牛丼のように似た味を提供する競合店が少ない。そのため、個人経営店や小規模業者が大手に淘汰されにくいのだ。
こうした背景から、知名度の低いジャンルが後に大手としてチェーン化する余地は大きい。「博多豚骨」「横浜家系」「京都背脂醤油」に続き、どのラーメン企業が次に上場するか。いまだ日の目を見ない新ジャンルに期待したい。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
横浜家系ラーメンで“天下取り”目指す「町田商店」の野望
なぜ「ちゃん系ラーメン」支持される? 背景に高齢化 こってり、がっつりだけではない新潮流Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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