亀田製菓と赤いきつねの“騒ぎ”はなぜ広がった? 企業を襲う「1%の誹謗中傷」と新法の限界スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2025年04月02日 07時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「情プラ法」を企業はどう活用していくか

 というわけで、「誹謗中傷をする人」を新たに規制するような法律は、現実的になかなか難しい。そこで、プロパイダー責任制限法をちょびっと前に進めて、本来は「場」を提供しているだけのプラットフォーマー側に「迅速に対応」を義務付けることで、抑止力にしようと考えた。

「情プラ法」は誹謗中傷の抑止力になるか(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 多くの専門家は、今回の「情プラ法」は誹謗中傷対策として、それほど劇的な変化はないと考えている。プラットフォーマー側に「アナログな負担」を強いるだけで、問題の根本解決につながらないという意見もある。筆者も同感だ。

 ただ、危機管理の世界でこれは大きな変化だ。これまで多くの企業ではネットやSNSでどんなに悪口を投稿されようとも、デマを流されようとも「静観」が基本だった。それらにいちいち律儀に対応してしまうと、「SNSごときにムキになって」と揶揄(やゆ)されたり、オールドメディアが取り上げて「ニュース」として大事(おおごと)になってしまったりするからだ。

 しかし、亀田製菓や赤いきつねのケースを見ても分かるように、もはやネットでテキトーに語られていることもバズりさえすれば、そのままオールドメディアがニュースとして取り上げる時代だ。「危機管理は初動対応が命」という原則からも、「情プラ法」を活用して「迅速な火消し」を心がけていただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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