さて、今回もプロポーザル評価について考えてみましょう。これまでの連載では、プロポーザル型事業者選定のための調達仕様書の書き方、事業者から提示された提案書の評価方法について解説してきました。
ここまでの記事をお読みいただいている自治体の方の中には、「ここで説明しているプロポーザル評価は、うちの自治体でやっている方法と少し違う」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、プロポーザル評価は厳密にルールが決まっているわけではありません。多くの場合、案件ごとに審査委員会実施要綱を定め、要綱に沿って審査を行うことになります。自治体ではありがちな話ですが、この要綱をゼロから作ることはまれで、多くは庁内で過去に実施されたプロポーザル評価の内容を参考にしています。そのため、要綱で定める内容は自治体の中で独自に進化しているものもあり、
――など、多岐にわたります。
これも「曖昧さは権力の源泉」の一つの姿かもしれませんね。私自身は、プロポーザル評価での透明性を維持することで、自治体と事業者との信頼関係を築き、仮に今回の案件では契約事業者に選ばれなかったとしても、次回以降の別の案件で有力な候補者として手を挙げてほしいという思いがあります。
事業者が提案書を作成し、提案するにはコストがかかります。せっかく尽力してくれたのですから、自治体は誠実に対応するべきではないでしょうか。その中で、プロポーザル評価における、面談審査(プレゼンテーション)の考え方は非常に重要です。
今回は、その面談審査に焦点を当てたいと思います。
まず、改めてプロポーザル評価におけるそれぞれの配点比率を確認しましょう。
面談審査を全体の20%の配点にしているのには理由があります。これは「面談審査で一発逆転させない」ことを狙っています。あくまでも、提案書(MUST、WANT)と価格評価を主体にした評価を行い、面談審査は同じレベルの事業者に対して、どちらの事業者と一緒に仕事をやりたいかを判断する目的で行います。
したがって、面談審査の審査基準は提案の内容ではなく、人物評価を目的とすることになります。逆に面談審査の中で提案の内容を審査対象にすると、二重評価になってしまうので避けるべきです。
少し脱線しますが、提案事項(WANT)と価格評価(見積額)が同じ配点比率であることにも意味があります。
一般的には、提案事項と価格評価の点数は負の相関になります。つまり、魅力的な付加価値提案をするためには相応のコストが掛かり、その分、価格評価の点数が低くなるという関係です。提案者の戦略として、提案を抑えて価格で優位性を得ることも、その逆もあり得ますが、その中で最大限成果を期待できるものを選びたい、という考えがあります。
話を戻しましょう。私が関与する自治体での面談審査の項目は次のとおりです。
少し抽象的な表現になっていますが、プレゼンテーションの内容を評価するのではなく、プレゼンーションや質疑応答での振る舞いを評価するように審査委員にはお願いしています。
そして提案者に対しては、プレゼンテーションは、この業務を受託した場合に発注者との間の窓口になり、業務全体の責任を負える方(プロジェクトマネージャ)が担当してほしい旨を伝えています。
少し大規模な会社になると、プロポーザル評価のために、
――が組織され、受注すると全く別の人物がプロジェクトマネージャになっている、という場面が過去には散見されましたので、そのような対応を避けていただくために、このような条件をつけています。
なお、これまで数多くのプロポーザル評価に関わってきましたが、審査委員の中には「面談審査で一発逆転する」というドラマチックな展開を待ち望んでいる方もいらっしゃいます。
あらかじめ評価の観点を審査委員に伝えておく必要はありますし、プロポーザル評価全体を通じて曖昧さを含んだ評価をできるだけ排除するべきですが、この面談審査については好き嫌いの要素が残ってしまいます。したがって、審査の結果が事業者選定に決定的な影響を与えない程度までの配点にしておく必要があります。
次回はChatGPTの新機能についてご紹介しましょう。さらに、プロポーザル評価に生成型AIを使う方法を考えていきたいと思います。
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