文部科学省が推進する「校務DX」の導入は、まだ1割止まり――。ICT市場調査コンサルティングのMM総研(東京都港区)が実施した「校務DXに向けたICT整備動向調査」で明らかになった。
校務DXは、クラウドを前提とした次世代校務支援システムの整備や、校務系・学習系ネットワークの統合、ダッシュボードによる情報の見える化などを柱とした取り組みだ。教員の柔軟な働き方を促進し、自治体ごとに異なる業務フローの標準化を目指している。
校務DXの取り組みのうち、次世代校務支援システムをすでに導入している自治体は、全体の約10%にとどまった。導入・検討状況には都道府県ごとに差があり、文部科学省が推進する「次世代の校務デジタル化推進実証事業」に参加した山口県、秋田県、岩手県などでは導入率が高くなっている。
一方、導入や検討が進んでいない自治体は全体の約6割にのぼった。特に人口規模の小さい自治体では、人的・財政的リソースの不足が課題となっている。導入を検討している自治体は、2025〜2029年度にかけて、既存システムの更新時期に合わせて分散的に進行すると考えられる。
文部科学省は都道府県単位での共同調達を推奨している。調達の手間や運用負担を減らし、小中学校間でのデータ連携の強化やノウハウ共有を進める狙いがある。
今回の調査では、28%の自治体が「共同調達の具体的な動きがある」と回答。26%が「都道府県から案内があった」としている。一方で、45%の自治体は「都道府県から何も知らされていない」と回答していて、対応には温度差が出た。
共同調達については、賛成する自治体が全体の71%に達し、特に小規模自治体では高い傾向がみられた。
システムの導入形態については、28%の自治体が「クラウド型(SaaS型)」を採用・検討しており、「PaaS型/IaaS型」は5%、オンプレミスは2%にとどまった。帳票のカスタマイズなど、完全なSaaS型での導入には課題が残っているものの、今後は「業務フローをシステムに合わせる」形での導入が増えていくと見込まれる。
校務系と学習系ネットワークの統合を進める自治体は44%に達し、2023年4月の調査の10%から大幅に増加した。文部科学省の専門家会議による成果の報告や予算措置が後押しとなり、ゼロトラストセキュリティを基盤とするネットワークインフラへの見直しが進んでいる。
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