ワタミの2025年3月期第3四半期決算によると、売上高は661億2600万円(前年同期比5.7%増)、経常利益が50億4100万円(同7.9%増)と順調だ。国内・海外の外食事業が回復してきたのが業績を押し上げている。
国内外食は売上高253億円(同7.4%増)、セグメント利益11億7700万円(同22.6%増)。不採算店の撤退を行い、店舗数は減少したが店舗当たりの売り上げが伸びて増収増益となった。「ミライザカ」「鳥メロ」などの居酒屋業態は、宴会需要が好調で、コロナ禍の間で競合店舗が減ったため、相対的に多く残った、ワタミの店舗に宴会が集中している。
焼肉の和民や「かみむら牧場」「すしの和」なども、インバウンド人気もあって好調だ。一方、コロナ禍で急拡大した「から揚げの天才」は、ピーク時から大幅に縮小して6店舗しか残っていない。
海外事業は売上高74億4600万円(同36.6%増)、セグメント利益が2億600万円(前年同期は2300万円の損失)。香港の不採算店整理による損益改善が寄与し、増益に転じた。
宅食事業は売上高309億5900万円(同0.5%減)、セグメント利益38億8400万円(同13.6%増)で減収増益。ステイホームが終わり、外食ニーズが本格的に復活して売り上げは減ったが、購入者の単価が上がっている。
新商品として、おいしい健康社と共同で、糖尿病などの食事管理に対応した「ワタミdeおいしい健康」を2024年12月2日から販売している。「ワタミの宅食」として食事療法を手掛けるのは初。発売から約2カ月で累計15万食を売り上げている。
このようにワタミでは、若い人向けにはサブウェイで野菜をふんだんに使ったヘルシー志向のサンドイッチを売り、高齢者にはしっかりと栄養バランスを管理した糖尿病の食事療法を取り入れた弁当を提案。ビジネスパーソンには居酒屋、インバウンドには和牛や寿司といったように、勝ち筋の諸業態でポートフォリオを組んでいる。「居酒屋のワタミ」から、健康を前面に出した事業を主力とする外食・中食企業へと、本格的なモデルチェンジが進んでいる。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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サブウェイは「病み上がり」のワタミを救えるか 成功のカギは2つCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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