この記事は『利益を出すために重要な24の数式』(野本明著、日本能率協会マネジメントセンター)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
どの企業でも活動の軸と言えるのが売り上げ施策です。では、売り上げ施策は誰を対象として、どういう戦略の組み合わせになっているのでしょうか。
売り上げ施策の効率を上げるには、この売り上げの構造を明確にしておくことが重要です。
まず誰を対象にするか、という顧客軸を明確にすることが欠かせません。
対象顧客と言うと、年齢層とか趣味嗜好など思い浮かべるかもしれませんが、重要なのは顧客を「新客」か「既存客」かで分けることです。なぜなら新客と既存客ではニーズが全く異なるからです。
ニーズが異なるなら同じ施策を行っても良い結果が生まれるはずはありません。分かりやすい例を挙げると、価格が上から松・竹・梅の3ランクの商品がある場合、初見でいきなり一番高い松にはなかなか手が出ないものです。まず様子見として真ん中の竹、または一番買いやすい梅を選ぶのではないでしょうか。
一方、気に入って通ってくれる常連さんなら迷わずお気に入りの松を注文してくれるでしょう。その両方に同じ施策をやっていてはどちらにとっても中途半端に終わるのは明らかです。
新客に対する売り上げ施策は「新客獲得」(Acquisition)と呼び、既存客に対する売り上げ施策は「既存客活性化」(Activation)と呼びます。
私のかつて在籍した通販企業ではこれを明確に使い分けていました。両者の最大の違いは、新客獲得には大きな経費が必要で、既存客活性化は大きな利益を生み出すということです。
ならば既存客活性化だけやればいいのでは、と思えますが、それでは成長が止まってしまいます。経費のかかる新客獲得でもあえてやり続けることが継続的な成長には不可欠なのです。
ひとことで売り上げと言っても、それは3つの異なる力によって作られています。
まず商品そのものの「商品力」、次に消費者を販売場所まで呼び寄せる「集客力」、そして現場で実際に商品を勧める「販売力」の3つです。この3つの力をそれぞれ最大化する施策を考え、さらに効率的に組み合わせることではじめて売り上げを伸ばすことができます。実はこれが難しいのです。私が過去に従事した企業でもそうでしたが、この3つの力は違う部署が担当していることが多いのです。
こうなると3つを効率的に組み合わせる、というのが途端に難しくなります。そもそもこの3つの部署は同じ売り上げを目標にしても違った見方で売り上げを捉えています。だから、話がかみ合わなくても当然なのです。それゆえ、同じ目的のために他の2つの力はどういう策を講じるのかを互いに知っていることが非常に大事になります。
もうひとつ厄介なことがあります。この3つの力は足し算でなく掛け算で売り上げを作っています。ひとつの力が完璧だとしてももし他の力が弱かったら、全体では結果が出ない、ということです。掛け算ではどこかがゼロになると全体がゼロになります。
したがって、3つの力のどこも欠けることなく高め合っていくことが絶対に必要です。
以上のことを踏まえると、実際の施策段階では2つの顧客軸に対して、それぞれ3つの戦略軸で施策を考える必要があるということになります。合計すると、6つのマトリクスで施策が立案され実行されていくようになるのです。ややこしそうに聞こえるかもしれませんが、やってみるとこの方がより簡単に効果的な施策を考えることができます。
今は成長のため新客を取ることがより重要なのか、あるいは収益改善のため既存客を重視した戦略を取るべきなのか、まずこの全体としての方針が施策に大きく影響します。
そしてそれぞれの顧客軸に対して、3つの戦略軸がそれぞれ施策を出しますが、そのときに他の戦略軸と十分にシンクロしたタイミングと強度で実施できるかどうか、という見地で検討することができ、成果はより確実に表れます。
Special
PR注目記事ランキング