「今年の新人は受け身だな」と決めつける前に、上司のあなたが自覚すべきこと「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)

» 2025年05月14日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

下手なレッテル貼りが招く悲劇

 なぜその課長は、新入社員に嫌われているのか? 発言からすぐに分かった。

 「今年の新人は、受け身の姿勢で困ります。もっと自分から動かないと」

 そのように不満を口にするので、どんなエピソードがあったか尋ねると、会議で質問しても、新人は少し考えるだけで「特にありません」と答えたという。他のエピソードを尋ねても、その一回しかないそうだ。

 他の新人たちにも、「やる気が見られない」「積極性がない」「個性を主張しすぎだ」と苦言を呈したようだが、まだ1回や2回しか会っていないのに、そのようにレッテルを貼っていたようだ。

 私は「それは早すぎる判断では?」と意見をした。

 「だから私は嫌われるんでしょうか? 部長から、けっこう厳しく注意されまして」

 この課長の思考は「過度の一般化バイアス」に基づいている。少ない情報を手掛かりに、あたかも相手を見抜いたかのように振る舞うのだ。そして一度貼ったレッテルを、なかなか剥(は)がそうとしない。

 「この新人は、根が暗い」

 「あの部下は、指示がないと動けない」

 「どうせ、努力しないタイプだろう」

 こうした思い込みは、相手の可能性を閉ざすだけでなく、自分自身のマネジメントの幅も狭めてしまう。

 なぜこのように、すぐレッテルを貼りたがるのか。これには心理的な理由がある。不確実なものは人を不安にさせるため、何とかシンプルに解釈し、分かりやすいカテゴリーに押し込めたくなるのだ。

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