このようなレッテル貼りを防ぐには、「アナロジー思考」が役に立つ。アナロジー思考が必要な理由は以下の3つだ。
アナロジー思考とは、ある対象を、似た構造を持つ別の事例になぞらえて考えることだ。言い換えれば、「これは別の何に似ているか?」と問い直す思考法である。
例えば意見や質問をためらう新入社員を見たとき、すぐに「受け身の姿勢だ」と決めつけるのではなく、こんなふうに考えてみる。
「初めて参加した茶道教室で、先生から『質問は?』と聞かれても、すぐには出てこないよな」
「入社直後の新入社員は、いわば転校生のようなもの。教室の空気に慣れるだけでもせいいっぱいじゃないか」
別の状況に置き換えることで「いま質問しない=受け身の姿勢=やる気がない」という単純な図式に疑問を覚える。
「いや、そうとも限らないか……」
そこからようやく「もう少し様子を見てから評価しよう」「今度は話しかけやすい雰囲気を作ってみようか」といった建設的な思考に切り替えられるのだ。
アナロジー思考の最大の効用は、「決めつけを防ぎ、余白を残すこと」だ。
ある製造業の部長の例を見てみよう。その部長は新人の配属直後、「あいつはダメだ」と決めつけた。だが、同時に「いや、待てよ。うちの息子も大学時代は自分の意見を言えなかったな」と思い直した。そして「半年くらいは見守ってみよう」と判断した。
結果として、その新人は半年後には見違えるように成長した。先輩とのランチで緊張がほぐれたことをきっかけに、徐々に自分の意見も言えるようになったのだ。部長が早とちりしなければ失われていたかもしれない人材だった。
人はとかく、未知のものに対して不安を感じる。だから、早くラベルを貼って安心したくなる。しかし、組織においてはその"安心"がかえって害になる。新入社員は、見えない部分が多いのだ。
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