今回の新法では、民間企業にとっても負担が増えることになる。まずは、基幹インフラ事業者に対する義務だ。
基幹インフラ事業者とは、電気、ガス、石油、水道、鉄道、貨物自動車運送、外航貨物、港湾運送、航空、空港、電気通信、放送、郵便、金融、クレジットカードの15業種を指し、2024年11月末時点で213社に上る。これらの事業者は、サイバー攻撃による被害のみならず、攻撃の前兆と考えられる事象の報告も義務化される。
これまでは業界ごとのルールに沿って、事後報告で済んでいたものが、今後はサイバー攻撃の可能性がある曖昧な情報も含め、迅速な報告が必要となる。
加えて、使用している電子機器の製品名やネットワーク構成なども政府に届け出ることが求められる。これにより、サイバー攻撃のリスクが高い企業の製品や通信を把握できるため、対策がしやすくなるというわけだ。
しかも、こうした義務を怠った場合には、最大200万円の罰金が科される可能性があり、かなり厳しい内容になっている。日本政府のサイバー対策における本気度がうかがえるが、企業側の負担は大きい。
それだけではない。IT機器を基幹インフラ事業者や政府に販売するメーカーなどは、サイバー攻撃に対する脆弱性を検知して対応できるよう、製品設計など必要な情報を提供することが求められる。
こうした義務により、企業には報告や届け出の体制を作る手間が生じて、負担が重くなることは間違いない。だが、サイバー攻撃による被害の甚大さと深刻さは、多くの企業がすでに理解しているはずだ。こうした手間のかかる対策なくしては、安心は提供できないということだろう。
また、このような義務を果たすと、政府などから情報も得られる。企業側にもメリットはあるといえる。
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