立地戦略の違いも両者の明暗を分けた。いずれも地方都市の道路沿いに1号店を構えたが、はなまるはイオンやイトーヨーカドーなどの商業施設内や都市部の駅前に出店したのに対し、丸亀製麺はロードサイドを中心に展開した。はなまるのロードサイド比率は2割にも満たず、安売りを迫られた背景には、他の飲食店に隣接するなど、競合の多さも影響したと考えられる。
対する丸亀製麺はコンビニが出店したがるような角地に大きい店舗を構え、店舗自体が広告効果を発揮した。近年では駅前や施設内でも丸亀製麺の店舗が見られるが、拡大当初は郊外立地を攻めたのが奏功したといえる。はなまるは飲食店が乱立する都市部で埋もれてしまった印象が強い。そのため、自宅の近くにある丸亀製麺の場所は分かるが、はなまるはどこにあるか分からないという人も多いのではないか。
立地の違いはコロナ禍の業績に影響した。運営元であるトリドールホールディングスの国内丸亀製麺事業は、2020年3月期に売上高956億円を記録し、25年3月期には1281億円となった。感染を避けたい消費者が郊外に流れたことで、同様の立地にある飲食チェーンは軒並み好調だった時期だ。はなまるは、2020年2月期の売上高が308億円となり、翌2021年2月期は都市部・施設内立地がアダとなって203億円となった。2025年2月期は308億円と、回復が遅れている。
丸亀製麺、はなまるはともにセルフ式だが、はなまるはロードサイドでタブレットによるテーブルオーダー制を展開する方針だ。利便性で差別化を図ろうとしている。近年、うどん業態ではすかいらーくホールディングスが資さんうどんを買収し、関東で展開し始めている。同社は専門店業態を強化しており、ガストの既存店から資さんうどんへの業態転換も進むとみられる。既に郊外立地を押さえているすかいらーくホールディングスのポテンシャルは大きく、はなまるが業界3位に転落する可能性も見えてきた。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
丸亀製麺ユーザーが、他の店を利用するのはどんなとき? 競合はなんとマクドナルドCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング