――ちょっと極端な例ですが、画面に映るところだけ気を付ければいいと考えて、上半身だけシャツ+ジャケットできちんと見せるけれど、ボトムスはパジャマのままでいいや、なんていう人も一定数いそうです。
私は、洋服でなりたい自分、相手に認識してほしい自分を演出することは大切だ、というお話を普段からしています。ところが実際に着る服によって思考・感情・行動も変化するということが科学的に裏付けられているということが分かりました。それは、米国・ノースウェスタン大学のアダム&ギャリンスキーが提唱する「被服認知」という心理学の理論です(Adam & Galinsky,2012)。
ですから、パジャマのズボンを履いていたら後ろめたさもありますし、それが自信のない振る舞いとしてにじみ出てしまうかもしれないですよね。やっぱり相手と真摯に会議をするのに相応しい服装ではない、ということです。
――それとPCの画面は、ピクセルの配列が格子柄になっているため、洋服の柄と干渉し合うとモアレが出ることがあります。その意味では、柄選びにも注意が必要ですか?
はい。幾何学模様、チェック、小紋など、細かく連続しているような柄は、モアレが出やすいので、柄物のネクタイをされる時は注意が必要です。
やはりモアレが出ると、そこが気になってお話に集中できないですよね。オンラインでは「画面に余計な印象を与えるものを見せない」が鉄則だと思います。その点で、無地の服は無難と言えます。
――服装と同じくらい、オンラインでは背景も気になるポイント。自宅の場合、プライベートが見え過ぎてしまう懸念もあり、何が正解か迷うところです。
先ほども申し上げたように、「余計なものを見せない」が基本なので、背景は白い壁を基調としたシンプルな空間であるに越したことはないです。
ただしここに戦略を盛り込むのであれば、本棚の前に座ることで教養をアピールする、インテリアにこだわりを見せてセンスをアピールするなど、映り込む背景を積極的に活かすこともできます。
以前、ご自宅から会議に参加されていたある男性ですが、次の日に着るスーツとネクタイをビシッと美しくハンガーにかけているのが見えて、「こういう風に翌日の準備をされるんだ。きちんとしていて素晴らしい」と好印象を持ちました。これがもし、だらしなくかかっていたら、生活感が出てマイナスの印象になったかもしれないですけれどね。
――なるほど。背景も服装同様にイメージ戦略に有効なんですね。それでは、ぼかし背景はいかがでしょうか? 実際に使っている人も多い印象です。
そうですね。でもぼかし背景って、「部屋が片付いていないから、ごまかしているのかな?」とも取れますよね(笑)。あるいはプライベートをあえて見せないとなると、距離感を感じ、冷たい印象になります。
そのほか、さまざまなバーチャル背景もありますが、ゴージャス過ぎてあざとく思われたり、カジュアル過ぎてビジネスの場にそぐわなかったりも。ですから、どんな背景にしろ、主張の仕方や相手に余計な詮索をされないようなものかを吟味してから採用するといいと思います。
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