――運営会社は「リーガルチェック済み」「就活生は安心して利用できる」とうたっています。利用する就活生は安全といえるのでしょうか。
佐藤弁護士: 企業の採用面接などでは、企業側が録音を禁じている場合があります。明確に禁じていなかったとしても、就活生が企業の同意を得ずに面接やグループディスカッションなどを録音した場合、「秘密録音」にあたります。いずれのケースでも、参加者のプライバシー権の侵害にあたるかどうかが問題になるでしょう。
プライバシー権の侵害にあたるかどうかは、会話の当事者の関係性、秘密録音を行った目的・必要性、録音に至った経緯、録音の利用方法などさまざまな事情を総合的に考慮し、判断されます。一般的には、秘密録音を私的に保有しているにとどまっていれば、プライバシー権の侵害として違法とまではいえないと考えられます。
ただし、録音データをネット上に投稿した場合、プライバシー権侵害となる可能性はあります。
(1)本来外部に流出することが予定されていない内容と考えられること
(2)自身の就活のための振り返り用として秘密録音したものを公表する必要性が高いとは言い難いこと
(3)投稿者以外の面接やグループディスカッションへの参加者の発言も音声に含まれている可能性があり、これらの者は自己の発言が公表されることを想定していないと考えられること
などから、違法なプライバシー権侵害となる可能性を否定することはできません。
その他、投稿された内容が、企業や参加者の社会的評価を下げるものである場合には、名誉毀損が問題になる可能性もあります。違法な名誉毀損にあたるかどうかは、公共の利害に関する事実か、公開の目的に公益性があるかによって変わります。
ボイスキャリアに投稿された音声は、企業名や選考年次、面接形式などが公表されている一方、ボイスチェンジや音声カット、自主規制音による加工を実施しているとのことで、実際に投稿されている内容が、誰の発言なのか特定できるのかどうか不明です。特定できる場合には、プライバシー権侵害や名誉毀損など、法的にも問題となるリスクがあることは知っておいた方が良いでしょう。
仮に、法に触れなかったとしても、録音禁止の面接などをこっそり録音したこと、さらにはネットに投稿したことなどが後から企業に知れた場合、採用されたとしても企業との信頼関係が崩れる危険があります。
――今後、掲載された企業から、ボイスキャリアの運営会社や、投稿した就活生本人が訴えられる可能性はあるのでしょうか。
佐藤弁護士: 投稿されている内容にもよりますが、掲載された企業や面接参加者などがボイスキャリアの運営会社に対して、権利侵害を訴え、削除要請をすること、削除に応じなかった場合に損害賠償請求することは考えられるでしょう。また、投稿者がプライバシー権侵害や名誉毀損などを理由に損害賠償請求される可能性もあります。
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